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感染拡大防止対策としてのバーチャル株主総会

2020年03月05日

政策調査部 主任研究員 鈴木 裕

上場会社の各種説明会や展示会など、多人数が集まるイベントの中止や延期が広がっているが、上場会社が開催せざるを得ない定時株主総会が間近に迫っている。定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りる(法務省「定時株主総会の開催について」)が、前例がほとんどない(東日本大震災時に数社延期した例がある)だけに、上場各社は難しい判断に直面している。現在の状況が「定時株主総会を開催することができない状況」なのか、「その状況が解消された」とはどのように決定すればいいのか、必ずしも明らかではない。3月総会(12月決算)の約460社、6月総会(3月決算)の約2,410社のほとんどは、できる限り衛生に配慮して感染拡大対策をとりつつ、予定通りに開催するだろうと思われるが、高齢の出席者が多いだけに、新型コロナウイルスの感染拡大の場になるのではと危惧される。

生身の人間が一堂に会して株主総会を開催するのではなく、インターネットなどの情報通信技術(ICT)を用いて決算報告や議案の質疑、採決を行えば、感染リスクを小さくできるはずだ。旧来の総会をリアル総会、ネットを介した総会をバーチャル総会といい、経済産業省「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」では、2月26日に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を公表している。ここでハイブリッド型というのは、リアル総会とバーチャル総会を並行して開催することを意味する。ハイブリッド型だとリアル総会を開催しなければならないので、出席者の感染リスクを減らす効果はあまり期待できない。

「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」がリアル総会抜きのバーチャルのみでの株主総会の実施を検討対象にしなかったのは、バーチャルオンリー型株主総会は、現行の会社法下においては解釈上難しい面があるとの見解が示されているからだろう。しかし、諸外国では、2000年の米国デラウエア州会社法改正(米国では各州で会社法が制定されている)をはじめとして、バーチャルオンリー型株主総会を可能にする立法例が少なくない。こうした立法は、リアル総会を廃止するのではなく、リアル、バーチャル、その併用を会社の選択によって可能にするものだ。日本でも株券電子化やネット経由の議決権行使、株主総会資料の電子交付などでは電子化対応の進展が見られたが、株主総会の場所の電子化、リアル総会の開催任意化は、検討されることがなかった。

リアル総会の開催が不可避であるとすれば、総会への出席者を少なくすることが感染リスク対策として一考に値する。総会への出席意欲を削ぐこと、例えば、総会出席者へのお土産をやめ、その旨を招集通知に目立つように書くのは効果的だろう。出席を難しくする方法もある。いわゆる集中日(今年の6月総会では、6月26日)に開催することや、開催地を不便な場所にすることが考えられるが、実施すれば批判を受けるかもしれない。なお、集中日に開催する場合や、過去の開催地と著しく離れたところで開催する場合は、その理由を定めなければならない(会社法施行規則第63条第1号ロ及び同条第2号)とされている。

危険な感染症は、新型コロナウイルスだけではない。最近に限っても、SARS(2003年)、新型インフルエンザ(2009年)、MERS(2012年)などがある。仮に今回の感染拡大に収束が見えてきたとしても、人間同士の接触機会を状況に応じて減らすことのできる、バーチャルオンリー型株主総会を認めるための検討を進めるべきであろう。

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