「ロンドン観察記」

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2020年02月10日

私事で恐縮だが、2009年のリーマン・ショックのタイミングでニューヨークに駐在し、今回、帰国以来約8年ぶりにイギリス、ロンドンに駐在する機会を得た。1月下旬に着任してまだ2週間余り、ブレグジットを云々するのはおこがましいだろう。実際、先日のブレグジットを経ても、特に日常に変化はない。ただ、路上駐車された自動車のナンバープレートの多くが、左端にEUの旗をあしらったデザインであり、ブレグジット後は全部交換するのだろうかと素朴な疑問を抱くぐらいだ。以下、これまで感じたことを、日米と比較しながら(ただし、NYは8年前の話)、思いつくままに書かせていただくが、個人的体験・感想の領域を出ないことを予めご了承いただきたい。

現在、地下鉄を利用してシティまで通勤しているが、ロンドンは、東京やNY同様に、縦横無尽に走っている地下鉄の利便性が高い。ただ、ロンドンの地下鉄を利用するのにネックとなるのが料金だろう。乗り降りするゾーンによって、あるいはピーク時か否かで料金が異なるものの、割安のオイスターカード(ICカード、日本のPASMOやSuica等に相当)を利用しても、最低2.4ポンド、日本円で約340円かかる。東京メトロの場合、距離28~40㎞(例えば、和光市—西船橋間の39.2㎞)の314円(ICカード利用)が最も高いが、ロンドンの初乗りよりは安い。実際、消費者庁によると(※1)、地下鉄の初乗り運賃は、日本(東京メトロ)を100とすると、NYは159、ロンドンは233とかなり割高である。もっとも、この値は平成25年度消費者庁委託調査(2014年2月時点調査)によるもので、為替レートが調査時点よりも2割ほど円高ポンド安に振れていることから、現在の価格差は小さくなっていると考えられる。

また、ロンドンの場合、車いすやベビーカー等が利用できるエレベーターの設置等バリアフリー化が進んでいるかと言えば、十分ではないだろう。例えば、筆者が利用するDistrict lineでは、エレベーターが利用できる駅は1/3程度にすぎず、東京の方が圧倒的にエレベーターによるルートが確保されている。そして、駅の案内表示は、日本では、訪日外国人の増加やオリンピック・パラリンピックを控えて、英語だけでなく、中国語や韓国語等多言語化が進んでおり、NYも基本英語だが、スペイン語や中国語等を話す人の多さに合わせて、連絡事項が掲示される。これに対して、ロンドンはさすが英語のみだ(ただし、オイスターカードの券売機は多言語化されており、日本語表示もある。ご安心を)。

一方、電車の中の風景は、スマートフォンをいじる人に、新聞や本を読む人等日米と変わらない。若干面食らったのは、読んだ新聞を席に置いていく(捨てていく)姿で、日本で言えば網棚に置くイメージだが、駅構内にゴミ箱が見当たらないためだろうか。日本では、家庭・オフィスとも細かく分別することが一般的になっているが、ロンドンは、NYと同様に分別が大雑把で、リサイクルできるかどうかで分かれている程度である。

ゴミつながりでもう一つ。日本ではプラスチック製買物袋の有料化が7月からスタートするが、ロンドンのスーパーでは有料が一般的で、外食の持ち帰りでも有料のケースもある。会計時にバッグは?と聞かれたら、そこは有料だと思った方がよい。ただ、マイバッグを持参せず、レジ袋を受け取っているケースが意外と多いように感じる。

そして、スーパーや地下鉄の駅を出ると、生活困窮者やホームレスがいるのも日常的である。リーマン・ショック後のNYで多かったのには驚きはなく、よく電車の席を占有していたが、まだロンドンではお目にかかっていない。驚いたのは、公園のベンチに横になっていたホームレスがタブレットPC等を使いこなす風景で、家はなくても携帯機器は必須ということか。

(※1)消費者庁、「公共料金の窓(改訂版) 3.公共料金の内外価格差」

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近藤 智也
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政策調査部

政策調査部長 近藤 智也