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日本でシェアオフィスは拡大する?

2020年01月23日

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

近年、所有から利用への動きはICTの進展やスマートフォンの利用拡大もあって加速しており、その影響は広範に及んでいる。我々の働き方についても同様であり、会社が所有(もしくは貸借)している決まったオフィスへ出社するのではなく、別のオフィスをその都度利用するというシェアオフィス市場が広がりつつある。シェアオフィスは居住地近くのオフィスを選んで利用できるというその特徴を活かして、2020年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピックによる都心の混雑緩和策として、さらには近年の地震・台風など自然災害で出社できないリスクに備える企業のBCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)対策としても注目されている。

昨年秋より、筆者もシェアオフィスを試しに活用し始めた。そこで、シェアオフィスを数カ月間利用してみた雑感を以下で記したい。

まず、通勤時間が大幅に短縮されることで、移動時間の節約により生産性が向上する。いつもと違う場所で仕事をするため気分転換になり、頭の中を整理したり、新しいことを考えたりできるために生産性が上がる。さらに、シェアオフィスでは自席で電話することが禁止されていることに加えて、会社の違う者同士が利用するため会話もなく、図書館よりもむしろ静かな環境で仕事ができるという点でもメリットは大きい。移動時間の短縮化によって子どもの習い事の送り迎えが可能になるなどワークライフバランスが充実する、シェアオフィスの近隣で食事等をするため地域経済に貢献するといったメリットもある。

その一方、シェアオフィスの生産性は通信環境に決定的に依存する。一般にシェアオフィス内ではWi-Fiなどの環境が提供されているが、セキュリティ上の関係でそれを利用しない場合は、Wi-Fiルーター(海外旅行などでよく利用されるもの)経由で社内環境に接続することになる。その場合、社内で作業を行うよりもPCの動作環境が悪くなって作業効率が落ちる可能性がある。さらに、同僚との何気ない会話や細かいやり取りが難しく、仕事を進めにくいなどの理由で作業効率が落ちることもある。出社の大きなメリットはface to faceで得られる情報にあることを痛感する。また、会社にある電子化されていない資料を参照できない、会社固有の端末などのインフラが利用できないといったデメリットもある。

働き方改革やBCP対策もあり、基本的にはシェアオフィスの利用は今後も拡大するだろう。上述したWi-Fiルーターや会社にある端末の利用などの問題についても、技術的には比較的容易に解決するものと思われる。

しかし問題は、仕事の進め方であろう。シェアオフィスは全ての業務に向いているわけではないと考える。例えば、対面や共同で作業を進める仕事や電話のやり取りが頻繁な仕事では、導入のハードルは上がると思われる。また、上司にとって部下の仕事ぶりを直接監視する必要があるような仕事では、シェアオフィスの導入は憚られる可能性がある。その反対に、業務の切り分けが進んでおり、メールのやり取りでのコミュニケーションに特に支障がなく、仕事の成果が見えやすい職務であれば、シェアオフィスのメリットは大きいと考えられる。

さらに、シェアオフィス会社と契約すれば自社にとって新たな費用負担が発生するので、それに見合うメリットがあるかどうかの検討も必要だ。例えば、もし利用者が一定数まで増えて、現在の自社のオフィスの規模を縮小して費用節減が可能になるなどのメリットが認識されれば、シェアオフィス市場は一層拡大する可能性がある。

ただし、最後のポイントも仕事の進め方が変わらないと利用者が増えないので、やはりここがシェアオフィス市場の大きなボトルネックになるものと思われる。シェアオフィスはそのメリットを活かしつつも、日本型雇用の変容と歩調を合わせながら導入が進んでいくのかもしれない。

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溝端 幹雄

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