米国CCRCの知恵
2020年01月22日
元気なうちに移り住んで多様なアクティビティを楽しみつつ、医療や介護が必要になってもケアを受けながら、生涯にわたって住み続けることができる退職者コミュニティCCRC(Continuing Care Retirement Community)が米国にはある。中でも、大学連携型は、ゴルフ等の娯楽だけからは得られない知的刺激が魅力となっているようだ。
米国のCCRCでは、豊富なアクティビティを通じて入居者の健康維持・介護予防を実現することが、ビジネスモデル上の大きな利点となっている。アクティビティから医療・介護ケアまでをパッケージとして提供しているため、要介護度の高い入居者の割合を低くすることが、CCRC事業者の収益拡大につながるからだ。こうした米国のCCRCの仕組みから日本が学ぶ点は少なくないだろう。
もちろん、公的介護保険の有無など、制度の違いがある米国のCCRCを、そのまま日本に導入することは適当ではない。日本では、日常生活機能がある程度低下してから介護サービスを利用するのが一般的だ。また、基本的に、利用者の要介護度が高いほど介護報酬が上がる日本の介護保険制度の下では、介護事業者が進んで介護予防や症状改善に取り組む動機が弱い。
だが、近年、国内でも質の高い介護サービスの提供が、事業者のインセンティブとなる仕組みが強化されつつある。平成30年度介護報酬改定では、通所介護利用者のADL(日常生活動作)維持・改善の実績についてバーセルインデックス(Barthel Index 機能的評価)を用いて加算する、アウトカム評価の仕組みが設けられた。これにより、これまで以上に質の高いリハビリ等を行う事業者が、高い介護報酬を得られることになった。
さらに現在、自立支援・重度化防止の効果が科学的に裏付けられた介護を実現するために、必要なデータを収集・分析するためのデータベースの構築が進められている。科学的に効果が期待できる介護サービスが確立されれば、それを普及させるように介護報酬のインセンティブを設計することが考えられよう。すなわち、エビデンスに基づく効果的な介護を提供する事業者が、より収益を得られる仕組みにするということだ。それは、何より利用者にとって、喜ばしいことでもある。
米国のCCRCとはやや異なるが、日本でも、利用者の自立支援・重度化防止が、介護事業者のメリットとなるように仕組みを再構築していくことができるはずである。現在の延長線上で介護サービスの供給不足を心配するのではなく、限られた介護資源で付加価値の高い介護をいかに効率的に実現するかに知恵を絞るべきだ。
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政策調査部
主任研究員 石橋 未来
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