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銀行とデジタル・プラットフォーマーのビジネスの類似性

2019年11月28日

金融調査部 主席研究員 内野 逸勢

メディアで最近よく目にするプラットフォーマーのビジネスモデルを改めて定義してみよう。まずプラットフォーマーとは“デジタル・プラットフォーマー(※1)”という言葉で置き換えられる。次にそのビジネスモデルは「つながりに着目したビジネスモデル」と「データに着目したビジネスモデル」の2つに分類される(※2)。

前者は、あらゆる場所からオンライン上でアクセスする消費者の多種多様なニーズと、様々な財・サービスの供給者との「つながりに着目したビジネスモデル」であると言えよう。組織の内部の特定機能を代替するために外部の機能をつなぐ「API(※3)エコノミー」、複数の金融機関の個人口座の情報をつなぐ「アグリゲーションサービス」などのビジネスが台頭している。さらにヒト・モノ・カネの多種多様かつ膨大な情報をあらゆるニーズに“つなぐ”(仲介)「マッチングエコノミー」「シェアリングエコノミー」などが当てはまろう。

「つながりに着目したビジネスモデル」は必然的に契約と課金が伴う。契約形態は、サービスと利用者を“つなぐ”効率性が劇的に改善することで、購入契約よりもレンタル、サブスクリプション型のサービス利用契約を選択する消費者が多くなる。このため契約・課金は少額化・短期化し、決済は銀行口座を経由した決済よりも、利便性の高いモバイル決済が主流となる。これにより決済の多様化が進む。当然、顧客の取引情報が付随してくる。これが後者の「データに着目したビジネスモデル」ということになろう。このビジネスモデルの中には、まずデジタル化が難しい“リアル”な情報を簡単にデジタル化する機器(スマホなど)自体を販売することがビジネスとなる。そのデータを“コンテンツ”化して提供する基盤の運営ビジネス(YouTube)、コンテンツ自体を創出するビジネス(ユーチューバー)などがある。さらに、リアルな情報をデジタル化することで、メルカリなどのネットオークションを通じて、従来、経済的価値の評価・判定が難しかった財・サービスの交換の場が生まれる。このように情報の活用が高まるほど「つながりに着目したビジネスモデル」が拡大していくこととなる。このビジネスモデルにおける少額・決済の取引では決済にかかるコストは安価なほど効率性が増す。以上を整理すると利便性の高い決済によって“つなぐ”と“情報”の2つのビジネスモデルの相乗効果によりデジタル・プラットフォームは巨大になったと言えよう。

銀行も同様に決済を中心に、“つなぐ”(=金融仲介機能)と“情報”(=情報生産機能)との相乗効果により巨大化していったと言えないか。銀行口座における決済が中心となり、大量な取引がなされ、当然、顧客情報が蓄積する。銀行の店舗を中心とした決済ネットワーク、資金移動ネットワークが拡大することで利用者の利便性が向上し、ネットワークが拡大していき巨大化していった。まさしく前述したデジタル・プラットフォームが巨大になった経緯と同様と言えよう。

しかし、その巨大化していった好循環が悪循環に変化している。顧客の銀行口座を通じた決済の活用が減る、情報が減る、長引く超低金利政策により重厚長大の決済システムを維持できなくなる、店舗ネットワークを縮小する、という悪循環である。このように考えても、伝統的な銀行のプラットフォーム・ビジネスの限界が近づいていると言えよう。

一方、デジタル・プラットフォーマーの成長は続くかというと、それも疑問である。個人情報に対する規制によって顧客データに着目したビジネスモデルが曲がり角にきており、巨大化という成長戦略の見直しを迫られている。こちらは“ビッグデータ”という言葉の活用が頻繁になればなるほどビジネスモデル(=稼ぐ仕組み)への期待が“バブル化”しているように思えて仕方がない。収益性が向上しなければ、銀行のプラットフォーム・ビジネスと同じ道を歩まないとの保証はない。2020年(2020年代)は銀行とデジタル・プラットフォーマーのビジネスモデルの行方に目が離せないのではないか。

(※1)株式会社NTTデータ経営研究所「平成29年度産業経済研究委託事業 プラットフォーマーを巡る法的論点検討調査報告書」平成30年3月、経済産業省。その中では「ネット広告、ネット市場、検索エンジン、SNS、アプリ市場、決済システム等の広範なネット上の活動の基盤」がデジタル・プラットフォーマーの一つの要素として挙げられている。
(※2)ダイヤモンド・オンライン「デジタル時代のプラットフォーム戦略-カテゴリー・プラットフォーマーの出現」ITR/内山悟志
(※3)Application Programming Interface。プラットフォーム側の汎用性の高い機能を外部から手軽に利用できるように提供する仕組みのこと。

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内野 逸勢

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金融調査部
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