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どうする親子上場

-ガバナンス改革、次なる照準は“上場子会社ガバナンス”-

2019年08月21日

経営コンサルティング第一部 主席コンサルタント 弘中 秀之

2019年6月28日に経済産業省より、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」(※1)が公表された。この実務指針では、以下の5つの在り方について、ベストプラクティスや重要な視点が取りまとめられている。

(1)グループ設計の在り方
(2)事業ポートフォリオマネジメントの在り方
(3)内部統制システムの在り方
(4)子会社経営陣の指名・報酬の在り方
(5)上場子会社に関するガバナンスの在り方

この実務指針は、今年度の安倍政権の成長戦略「経済財政運営と改革の基本方針2019~『令和』新時代:『Society 5.0』への挑戦~」(2019年6月21日)(※2)の中で策定が謳われている。

この成長戦略の中身を具体的に見てみると、コーポレートガバナンス改革に関しては、“上場子会社ガバナンス”のみがテーマとして取り上げられている。つまり、前記5つの在り方はそれぞれ重要な項目だが、コーポレートガバナンス改革の次なる照準は、“上場子会社ガバナンス”に定められていると見ることも出来る。

実務指針では、上記(5)の上場子会社ガバナンスに関し、以下の在り方が示されている。

①上場子会社におけるガバナンス体制の在り方
②上場子会社経営陣の指名の在り方
③上場子会社経営陣の報酬の在り方

この中で、例えば、「上場子会社における独立社外取締役の役割」として、「執行陣からの独立性に加え、一般株主の利益を確保する役割も期待されるため、親会社からの独立性も求められる」等が述べられている。

今後、上場親会社としては、上場子会社の一般株主の利益を損なうこと無く、グループ全体の企業価値向上を目指すための上場子会社に対するガバナンスの在り方について、検討を深めていく必要があろう。

一方、上場子会社としては、グループ方針と一般株主の利益確保が相反する場合に、適正な意思決定を行うことができるガバナンスの在り方について、検討を深めていくことが肝要となる。

さらに、実務指針では、「グループ全体としての企業価値向上や資本効率性の観点から、上場子会社として維持することが最適なものであるか、定期的に点検(レビュー)することが重要である」とも示されている。上場親会社においては、グループの事業ポートフォリオ戦略の視点からの施策が求められている。

例えば、グループ内の上場子会社に対し、それがノンコア事業ならば他社への売却、コア事業ならば上場廃止・完全子会社化も選択肢のひとつになるであろう。また、完全子会社化においては、上場親会社の既存事業と上場子会社の事業を並列化する純粋持株会社体制への移行も考えられる。今後、この実務指針を起点としたグループ組織改革、再編がじわりと動き出すかもしれない。

コーポレートガバナンス・コードが2015年6月に適用開始され、当初はその浸透や実効性に懐疑的な声を聞くこともあったが、独立社外取締役の選任、指名・報酬委員会の設置、中長期インセンティブを付与した役員報酬制度の導入など、日本におけるガバナンス改革は着実に進んできた。この流れを踏まえると、上場子会社のガバナンス改革も、困難は伴うかもしれないが、間違いなく前進していくであろう。

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弘中 秀之

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