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「消費増税対策でキャッシュレス化推進」に潜む盲点

2019年08月20日

金融調査部 主任研究員 長内 智

今年の10月に予定されている消費税率の引き上げ(8%→10%)が、いよいよ目の前に迫ってきた。政府が6月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)の中に消費税率の引き上げを盛り込んだことや、7月21日の参議院選挙において消費増税を主張した自民、公明の連立与党が参議院議席の過半数を維持したことから、現時点で増税の実施がほぼ確実な情勢だ。

消費増税は、少子高齢化が急速に進む日本において、社会保障の充実や財政規律の維持の観点から国民全体で税を負担するというものであり、当然のことながら、増税相当分だけ家計の懐事情は厳しくなる。しかし、今回の消費増税時には、新たに導入されるキャッシュレス決済の「ポイント還元制度」をうまく利用することで、その負担が軽減される。そのため、現在、生活防衛意識の強い国民を中心にキャッシュレス決済に対する関心が急速に高まっている。

このポイント還元制度は、2019年10月から翌年6月までの9ヵ月間、中小の小売店や飲食店でキャッシュレス決済を行った場合に支払額の5%もしくは2%をポイントで還元する、もしくは直接的に割り引くという制度である。政府がこの経済対策を打ち出した背景としては、「消費増税の影響緩和」と「キャッシュレス化推進」という2つが指摘できる。

今後の大きな焦点は、この政策が本当に二兎を追えるのかという点だ。実際の予算規模や政策の実施期間が限られることなどを踏まえると、その効果は限定的なものとなる公算が大きい。

まず、具体的な数字を確認すると、ポイント還元制度の2019年度の予算額として2,798億円が計上されている。しかし、この額は消費増税による負担増加額(約4.6兆円、軽減税率による負担軽減分を除く)の6.1%程度、2017年のキャッシュレス決済額(約65兆円)の0.4%程度にとどまる(※1)。

また、この経済対策はあくまでも時限的なものである。制度終了後は、店舗における加盟店手数料の引き下げや端末補助、消費者に対するポイント還元といった恩恵がなくなり、キャッシュレス化の動きが失速するおそれがあろう。経済産業省が7月末に公表したポイント還元制度の加盟店登録申請数は約24万件と一定の効果が見られる。しかし、これは中小・小規模事業者の全体の数に比べると限定的であり、時限的な制度終了後の反動などを見据えた事業者の慎重姿勢がうかがえる。

さらに、多くの人が気づいていないと思われる盲点として、政府が目標に掲げる「キャッシュレス決済比率」を計算するための基礎統計において、最近急速に利用者を増やしているQRコード決済サービスの一部もしくは大部分が捕捉されないとみられる点に注意したい。具体的には、銀行口座からお金をチャージしてQRコード決済を利用した金額が統計に反映されないとみられる。

実際にキャッシュレス化が進展しても、それが数字に表れない。こうした問題を回避するために、キャッシュレス化を測る「ものさし」を改善することも今後の重要な課題となりそうだ。

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