2019年05月22日
サマリー
◆近年、日本でもキャッシュレス社会の実現に向けた取り組みが着々と進められており、とりわけ2017年以降、産学官においてキャッシュレス化推進の動きが急速に盛り上がってきた。近年の産学官の積極的な取り組みや、記事件数からうかがえる注目度の高まりを勘案すると、2019年は、いよいよ「キャッシュレス化元年」と呼べる年になろう。
◆キャッシュレス化の長所と短所を総合的に判断すると、現在の日本においては、キャッシュレス化を一層推進して得られる恩恵の方が大きいと考えられる。そして、キャッシュレス化の推進は、日本経済の潜在力を底上げする「成長戦略」の重要な柱としても期待できよう。
◆経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」(2018)では、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度へと引き上げる目標を掲げている。しかし、近年のキャッシュレス化のペースや、日本人の根強い現金志向を考慮すると、その実現のハードルは非常に高い。
◆支払い手段に現金を選択する理由として、主に、①完結性、②利便性、③安心・安全性、という3つが重要なポイントになる。他方、キャッシュレス決済を利用する人は、現金決済にはないポイントや割引を特に重視している。
◆キャッシュレス社会を実現するための課題としては、(1)店舗の恒久的なコスト引き下げ、(2)キャッシュレス決済手段の乱立の阻止、(3)高齢者のデジタル・デバイドへの対応、(4)規制緩和による企業の収益機会の拡大、(5)100%キャッシュレスという幻想の払拭、(6)トリプル・ウィンの精神、の6つが挙げられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
成長と新陳代謝を促進するグロース市場改革
スタンダード市場への影響も注視
2025年05月12日
-
「少額投資の在り方に関する勉強会」報告書
東証は上場会社、投資家向けの情報発信などを強化
2025年04月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日