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“裸の大統領”トランプが再選を目指す

2019年08月01日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 近藤 智也

2009年6月から始まった米国の景気拡大は2019年7月で121ヶ月となり、記録のある1850年代以降では過去最長になった。市場の次の関心は、この拡大がいつまで続くか、何が引き金で景気調整局面に陥るかであろう。だが、トランプ大統領の予測不能なパフォーマンスが先行きを見通しづらくしている。

2016年の大統領選挙中から、トランプ大統領は型破り、前例無視の行動・言動が多かったが、就任後もその姿勢は一貫している。

対外的には、2018年3月以降、保護主義的な通商政策を掲げ、貿易赤字など米国に不利益をもたらすとみなす相手国に対し、対抗措置をちらつかせながら強硬姿勢で臨んでいる。メインのターゲットは、貿易赤字の約半分を占める中国であることは言うまでもないが、その姿勢は友好国でも変わらない。例えば、新たな貿易協定USMCAを結んだメキシコには、不法移民問題への取組みが不十分として、全輸入品に追加関税を課すと突如発表した。また、フランスが導入したデジタルサービス税については、米企業を標的にしたものと批判し、下戸のトランプ大統領は、フランス産ワインに追加関税を課すと報復を示唆する。

一方、国内的には、トランプ大統領自らが任命した閣僚を批判した上で解任したり、メキシコ国境沿いの壁建設を実現するために過去最長の政府機関閉鎖にも動じず、最後は、非常事態を宣言して建設費用を確保した。直近では、自分に批判的な民主党の女性下院議員らに対して、“国に帰ればいい”と発言し物議を醸した。

そんなトランプ大統領が、6月半ばに再選を目指して出馬表明し、“Keep America great”(米国を偉大なままに)をスローガンに掲げた。投票日まで1年半近くもあるタイミングだが、オバマ前大統領が選挙前年の4月、ブッシュ(子)元大統領が同5月に準備を始めた点を踏まえると、決して早すぎるということはない。

ただ、過去2年半余りを振り返って、景気が堅調で株価が最高値を更新しても、各種世論調査ではトランプ大統領の支持率は40%台半ばに留まっている。共和党支持者から圧倒的な支持を集めているものの、民主党支持者の支持率は1割、無党派層でも4割に届かないからだ。過去40年間で再選に失敗したカーター、ブッシュ(父)両大統領の選挙年の支持率が4割程度であったように、トランプ大統領もこのままでは再選が覚束ない。つまり、当選に必要な過半数の人々から支持される状況(厳密には、各州に割り当てられた選挙人合計の過半数獲得)を作り出さなければならない。

しかし、これまでのトランプ大統領の行動は、自分を熱烈に支持するコア層に響く一方で、支持層全体の拡大につながっているようにはみえない。この行動の背景には、2016年の大統領選挙において、全体の得票数は民主党のクリントン候補を約298万票も下回ったが、当選を果たした実績があるのだろう。もっとも、得票数が少ない点が気に入らなかったのか、当選後、トランプ大統領は数百万票単位の不正投票があったと主張し公式に調査も命じた。最近も、民主党の有力な大統領候補と比較した世論調査で、トランプ大統領は、自らの不利を示す結果に“ありえない”と不満をあらわにした。意に沿わないことには蓋をして、我が道を行く傾向は全く変わっていないようだ。

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近藤 智也

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ロンドンリサーチセンター
シニアエコノミスト(LDN駐在) 近藤 智也