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年金改革で注目されている3つのこと

2019年07月02日

政策調査部 研究員 佐川 あぐり

2019年は5年に一度の公的年金の財政検証が行われる年だ。その結果が注目されるが、それに加え、いわゆる「年金の2,000万円不足問題」もあり、年金改革が何かと話題になっている。2019年6月21日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)にも「厚生年金の適用拡大」「年金の受給開始時期の柔軟化」「在職老齢年金制度の見直し」が盛り込まれた。

「厚生年金の適用拡大」については、すでに2016年10月以降、それまでの厚生年金の適用基準が緩和され、短時間労働者が厚生年金に加入できるようになった。2019年1月現在で43.3万人の短時間労働者が新たに厚生年金に加入しており(※1)、政府は2019年9月までにさらなる適用拡大について検討を進めることとなっている。

適用拡大を進める背景には、短時間労働者の将来の所得保障への対応や、就労を希望する人にとって働きやすい環境の整備がある。厚生年金に加入すれば、基礎年金に加えて報酬比例年金も受け取れるため、将来の年金受給額を増やすことができる。厚生年金の保険料負担は労使折半であり、自身の保険料負担だけを考えれば国民年金に加入している場合よりも少ない負担で年金の上乗せが可能だ。

また、安倍内閣がめざす全世代型社会保障への改革の目玉が、70歳までの就業機会の確保である。これを進めていく上で、必要な年金制度の見直しとして挙げられているのが「年金の受給開始時期の柔軟化」と「在職老齢年金制度の見直し」である。

「年金の受給開始時期の柔軟化」に関しては、現在、年金の受給開始は原則65歳で、60歳への繰り上げや70歳までの繰り下げを自由に選べる仕組みだが、これを70歳超でも繰り下げ受給を選択できるようにする見直しが検討されている。繰り下げ受給を選択すれば毎月の年金額は上乗せされ、生涯にわたり割増しされた年金を受け取ることができる。長生きリスクに対応するために、高齢になってもなるべく長く働こうというインセンティブになる可能性がある。

「在職老齢年金制度の見直し」については、高齢者の就労意欲を阻害しない観点からの見直しが検討されている。在職老齢年金制度は、一定以上の賃金収入がある厚生年金受給者に対し、年金の一部または全額が支給停止される仕組みで、働いた分まるまるではないものの働くほど年金が減るため、高齢者の就労を抑制しているという指摘がある。ただ、仮に制度を廃止すれば、支給停止している年金を給付するための財源が必要になる。就労による所得が得られなくなったときの保険であるという年金の本質を踏まえつつ、就労抑制の効果と年金財政に与える影響等を十分に考慮し、検討が進められることになろう。

現在検討されている一連の公的年金改革では、働きたい人にとって働きやすい環境が整備され、人々の労働参加が進むことが期待される一方で、人々が将来の年金額を増やせることも期待されている。公的年金の実質的な給付水準は中長期的に引き下げられることが見込まれる中で、ではどのように老後に備えるべきか、多くの国民の悩みの種であり、老後の大きな不安につながっている。現役時代からの資産形成で老後に備えることも方法の一つだが、働けるうちは働くことで生涯所得と年金額を増やすことも、選択肢となりえるはずだ。

(※1)出所:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業月報」

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