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2019年株主総会の新たな想定質問

2019年06月04日

政策調査部 主任研究員 鈴木 裕

今年は、3月決算会社の上場会社のおよそ30%が6月27日に株主総会を開催する。かつては、95%が同日に開催していたのに比べれば、相当な変化だ。また個人株主には、なかなか質問しにくい雰囲気であったが、これもかなり変わった。総会の場で挙手をして、経営陣に問いを発することに大きな躊躇はないだろう。

多くの株主から多様な質問が出やすくなっているが、昨今の企業ガバナンス改革は、質問内容も変化させているようだ。女性役員の選任を含む取締役会構成メンバーの多様性に関する考え方、社外役員の役割や実績など、回答が簡単ではない質問も飛び出すようになっている。招集通知には、各社のガバナンスの状況が掲載されているし、証券取引所のウェブサイト等で公表されるコーポレート・ガバナンス報告書には、投資家が利用するだろうと期待される様々な情報が開示されている。これらを読みながら、質問を発する株主もいる。

コーポレート・ガバナンス報告書の記載事項を決めているコーポレートガバナンス・コードは昨年6月に改訂された。今年3月末決算会社からは有価証券報告書の開示情報も大幅に拡充される。総会で質問をしようとする株主にとっては、手掛かりが増えているということだ。拡充される情報開示のうち、株主総会で関連する質問があった場合、回答が難しいものがいくつかある。

・資本コスト
コーポレートガバナンス・コードでは、資本コストを踏まえて経営計画等を策定すべしとされている。具体的な数値の開示を求めるものではないが、株主総会で「当社の資本コストはどの程度か」という質問があれば、算定していないとは答えにくい。かといって、確定的な数字を出せるほど、資本コストという概念自体が固まっているわけでもない。

・政策保有株式の保有効果
有価証券報告書では、政策保有株式の定量的な保有効果を開示せよ(この開示が困難な場合は検証の方法を開示する)とされている。これも政策保有の相手先への配慮や、同業他社への情報提供になりかねないことを考えると、具体的な開示は難しいが、総会で質問が出ることは想定しておくべきだろう。

・経営陣の業績連動報酬
有価証券報告書では、業績連動報酬をはじめ、経営陣の報酬に関する情報が拡充される。金額自体が好奇心の対象になることはあるが、それが株主のもとに入る利益に見合ったものかという関心も湧き起こるだろう。業績や株価の動きと経営陣の報酬がどう関連しているかが問われる。

企業ガバナンス改革は、成長戦略の重点課題である以上、新たな課題が常に掘り起こされている。すでに来年の有価証券報告書の開示拡充の内容も決まっている。こうした新たな課題を敏感に察知して質問しようと待ち構えている株主も少なくないのだから、回答する経営陣も気が抜けない。

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政策調査部
主任研究員 鈴木 裕