ロボットの活用で介護はどう変わる?

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2019年04月23日

介護分野の深刻な人手不足を解決するために、介護ロボットの活用が注目されている。2018年度介護報酬改定では、見守り機器の導入によって効果的な介護が提供できる場合、夜勤職員配置加算が認められることになった。夜勤職員配置加算とは、規定の人員基準よりも多い職員を夜間配置した施設に加算されるものだが、この夜勤職員に代わって見守りロボットを導入した場合でも、加算を可能としたのである。このような介護報酬による後押しもあり、介護ロボットを導入している施設・事業所の7割が見守り機能を持つロボットを導入している(2018年10月時点)(※1)。見守り機器は、最も一般化した介護ロボットと言えるだろう。

見守り機器を導入した施設・事業所では、「利用者の行動パターンが把握できる(排泄、夜間行動)」「優先順位の判断ができる(同時コールの発生、他の利用者の介護中)」「訪室しなくても利用者の状況が分かる(即時性)」など、職員や施設業務全体の効率化が図られたという。また、利用者側も見守り機器の導入について、「転倒が減る(しりもち、座り込み等のヒヤリハット含む)」「緊急時にすぐに対応してもらえる安心感がある」「職員から見守られている安心感が高まる」など肯定的に捉えているようだ。少ない人手で増大する介護ニーズに対応する手段として、見守り機器の導入は有望な選択肢であるだろう。

しかし、さらなる導入拡大に向けた課題がある。見守り機器を導入していない理由、また、導入して感じた課題として最も多く挙げられたのが、「導入費用が高額」ということだ。これは見守り機器に限らず、他の介護ロボットについても挙げられた課題である。介護ロボットの導入で介護のコストをただちに引き下げられるわけではない。

実際、介護ロボット導入のきっかけが「導入に関して助成・補助があった」というケースは多く、導入されたロボットの半数が「国・県・市町村の助成/補助」を受けて購入・リースされている。2015年度からスタートした「介護ロボット導入支援事業」は、介護従事者の負担軽減効果のあるロボットの導入について、事業者の費用負担を減らす目的で創設された。また、自治体によっては、地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)を活用して介護ロボットの導入にかかる費用の一部を助成/補助している。導入のハードルを下げることは普及を促すために有効であり、これらの助成事業が認知されるにしたがって、介護ロボットが普及してきた。

2012年に介護・福祉ロボットで6~13億円、見守りやコミュニケーション、健康管理、家事支援など、周辺分野を合わせても38~57億円にすぎなかった介護ロボットの市場規模を(※2)、2020年度には約500億円とすることが目指されている(※3)。介護従事者と利用者の双方のニーズを満たすロボットの普及が進むことで、人手不足を乗り切るだけでなく、先進的な介護が実現することを期待したい。

参考資料:厚生労働省 第170回社会保障審議会介護給付費分科会資料「資料1-2(2)介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業(結果概要)(案)」(2019年4月10日)
(※1)厚生労働省 第170回社会保障審議会介護給付費分科会資料「資料1-2(2)介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業(結果概要)(案)」(2019年4月10日)
(※2)経済産業省 産業機械課「2012年 ロボット産業の市場動向」(2013年7月)
(※3)経済産業省 製造産業局 ロボット政策室「H30年度ロボット介護機器開発・標準化事業に向けて」(2018年1月)

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執筆者紹介

政策調査部

研究員 石橋 未来