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生産性向上の鍵「自動化」「自動運転」につきまとう不安

2019年04月12日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 金融調査部長 保志 泰

今月から海外で“5G”と呼ばれる新世代の通信サービスがスタートした。日本での本格開始は来年ということだが、高速・大容量の通信が、超低遅延で行われることから、IoTや車の自動運転にとって必須のインフラだとされる。

車の自動運転は世界のあちこちで実証実験が行われており、技術的には今すぐにでも実現できるレベルだと言えそうだが、本格的に導入するには不安な要素が多いのも事実だ。それを一層際立たせたのが、先般のボーイング737MAXの墜落事故だろう。原因には自動操縦装置の誤作動が関係している可能性が指摘された。どんなに最先端のシステムでも、何らかの不具合で誤作動を起こす可能性をゼロにはできないことを再認識させられた。

「自動」で機械を動かしたいという発想は、産業革命以降の技術革新の大きな原動力と言えるだろう。人間がより楽に、生産性を高めるための手段になるからだ。同時に、人間が判断を行う際に必ず発生する「ヒューマン・エラー」を減らせることも自動化のメリットである。車も飛行機も、自動運転によって多少経験が少なくても操縦が可能になり、かつ事故も減らせるインフラとなるはずだ。

自動化は日本がこの先抱える諸課題を解決するのに、大きな役割を果たすと期待されている。すなわち高齢化と人口減少である。例えば、昨今増えている高齢運転手による事故発生の低減、あるいはトラック運転手不足問題や過疎地域でのバス・タクシーの運転手不足問題の解消、など期待を挙げればきりがない。

その一方で、自動化には不安もつきまとう。GPSやセンサーが正常に機能しないケース、ハッキングやサイバーアタックの被害に遭う可能性、いざというときに人間が介入できるようになっていても普段から自動化に慣れてしまい即座に対応できないこと、等々あろう。

課題解決に向けて「自動化」を試みるのは乗り物や機械に限ったことではない。金融の世界でもアルゴリズム取引といったプロが用いる自動取引や、個人でも「ロボアドバイザー」による運用自動化の取り組みがある。いずれも「自動化」は完全ではないことを前提に利用しないと、思いもよらぬ損失や市場への影響をもたらすことがある。

つきまとう不安が解消されなければ、安心して自動化できない、と思う向きもあろう。ただ、「完全自動化」を目指すから、不安も大きいとは言えないだろうか。すでに実用化されている人間のアシストのレベルであれば、相対的に不安は小さい。高い目標で技術開発をするからこそ、様々なブレイクスルーが実現できるのは確かだろうが、最終的に完全自動化を実現すべきかどうかは、個々の課題に応じて考える余地はある。そして、ある程度の誤作動や事故の発生を前提とした社会システムの設計・構築も必要ではないだろうか。

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保志 泰

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