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東証の市場区分変更によって誘発される投資行動

2019年02月05日

政策調査部 主任研究員 神尾 篤史

多くの企業が目指す東証一部への上場が今よりも狭き門になるかもしれない。東京証券取引所(東証)において、市場構造(市場区分)や上場制度などを見直すために「市場構造の在り方等に関する懇談会」が昨年10月に設置され、2回の会議を経て、12月には東証から「市場構造の在り方等の検討に係る意見募集(論点ペーパー)」が公表された。

現在、東証は市場第一部・第二部、マザーズ、JASDAQの4つの市場が併存する階層的な市場構造になっている。この狙いは、①上場する企業のリスク特性に応じて市場を分類し、投資家の投資環境を整備すること、②企業による第一部への「昇格」(市場替え)に向けて中長期的な企業価値の向上や、健全な内部管理体制の維持・強化するような行動を促進すること、にある。

しかし、マザーズのような新興企業向け市場では、さらなる事業成長のために資金を調達するという本来の役割とは異なり、創業者が投資資金を回収するための上場という、いわゆる上場ゴールと呼ばれる行動が見受けられるという指摘がある。また、マザーズなどへの上場後、企業価値に大きな変化のない状況において短期間で市場第一部へ「昇格」する企業もある。今般の懇談会の設置や意見の募集は、企業価値向上に向けた企業の行動を促し、投資家の投資環境の整備を改めて行うことで現状を改善することにある。

懇談会では、それぞれの市場の上場基準の在り方や新興企業に対する上場後の成長の動機付けの在り方などについて検討がなされ、東証ではそれらに関する意見募集が行われた。日本経済新聞 電子版(2018年12月20日)「東証、『1部』企業を削減へ 優良企業を選別」では、市場第一部の上場企業数の絞りこみや市場二部・マザーズ・JASDAQの再編の検討について言及されている。

市場構造や上場制度の見直しで、投資家が最も憂慮することは企業の市場間移行である。保有銘柄が市場第一部から他の市場へ「降格」することになれば、株価の下落が生じる可能性が考えられるためだ。市場第一部への「昇格」で株価が上昇するケースがあり、先行き「昇格」が期待される銘柄に投資する行動も個人投資家では見られる。「降格」となれば、投資家による保有株の売却や、「降格」しそうな銘柄に信用売りを行うという行動もあり得るだろう。

このような行動を防ぐためには、再編によって生まれる新たな市場それぞれにブランディングが必要である。既存の銘柄が市場第一部以外に移行したとしても、移行先の市場が魅力ある意義付けがなされていること、すなわち「降格」というイメージが払拭される必要がある。移行プロセスには十分な配慮が求められる。

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神尾 篤史

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