北海道のインバウンドはいつ戻るのか

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2018年12月11日

  • 鈴木 雄大郎

北海道にとって2018年は「北海道命名150年」という節目の年である。8月には記念セレモニーが開催され、150年記念の限定商品が作られるなど、官民で盛り上がりを見せた。しかしながら、その年の9月に、北海道胆振東部地震が発生した。被災された方々には心よりお見舞い申し上げたい。

北海道は日本人のみならず、外国人にも人気の観光地である。域内総生産に占める宿泊・飲食サービス業の割合は全国平均よりも高く、インバウンド消費が道内経済に与える影響は大きい。また宿泊者数の約2割は外国人であり、大地震による外国人観光客の減少が北海道経済に与える影響は決して無視できないものとなっている。

過去に大地震に見舞われた地域の外国人宿泊者数の推移を見ると、熊本県では大地震前の水準まで回復するのに1年を要した(図表1)。東日本大震災で被災した宮城県では、1年が経過しても大地震前の6割程度しか回復していない。

加えて、外国人宿泊者数は大地震が発生した月だけでなく、その翌月も大幅に減少するという特徴が見られる。今回の北海道の場合、大地震が発生した9月の落ち込みは熊本県と同程度であった。10月の統計は執筆時点では公表されていないが、宮城県や熊本県の例に基づけば、10月も落ち込んだとみられる。

もっとも、北海道は1年もかからずに大地震前の水準に回復する可能性がある。まず1点目として、10月から「北海道ふっこう割」が導入されていることだ。「北海道ふっこう割」によって、外国人観光客は、宿泊料金の最大7割(1泊あたり1.4万円まで(合計5泊まで、最大7万円))の割引を受けることができる。熊本地震の際も「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度(九州ふっこう割)」が導入されており、このことが回復を早めた要因の一つとして考えられる。

2点目に北海道の外国人宿泊者数の季節性が考えられる。月別に外国人宿泊者数の推移を見ると、外国人宿泊者数は日本人宿泊者数と異なり、夏よりも冬(12~2月)の方が多い(図表2)。これは、オーストラリアなどから、北海道の上質な雪の上でウインタースポーツを楽しむために来道する観光客が多いことが要因としてあげられる。外国人観光客に人気のニセコは大地震の被害が軽微であり、こうした観光客は特定の目的を持って来るため、例年通りに訪れる可能性がある。

北海道命名150年のテーマの一つ目には「北海道151年目の新たな一歩を踏み出す」(出所:北海道150年事業公式サイト)とある。新たな1歩目を踏み出すためにも、12月からの3ヶ月間の外国人宿泊者数の動向が非常に重要になってくるだろう。

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