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そばの出前は8%、お店で食べれば10%、では原価は何%?

消費税率引上げとインボイス

2018年11月08日

金融調査部 制度調査担当部長 吉井 一洋

2019年10月から予定通り消費税率を10%に引き上げる方針が安倍首相から閣議で示された。引上げに際し一部の商品やサービスは8%税率が維持されるのは、国民の大半が知っているであろう。消費者にとってもお店にとっても複雑な仕組みとなるが、新聞の税率が8%である限り、批判的な意見というよりは、この制度が受け入れられるよう、懇切丁寧な解説が次々と出てくることが予想される。したがって、あえて筆者が説明する必要はないのかもしれない。

よく指摘されるのが、10%税率と8%税率の適用対象の区分のわかりにくさである。酒類に属するみりんや料理酒だと10%だが、酒類に該当しないみりん風調味料は8%とか、コンビニでの食品販売は8%だが、イートインコーナーだと外食に該当するため10%などが、混乱を招きそうな例として挙げられている。

税務当局の資料では、おそば屋さんも例として挙げられる。店内でそばを出すよりも、出前で届ける方が明らかに手間もかかるし、出前用のスクーターのガソリン代などのコストもかかる。人手もかかる。にもかかわらずお客さんから取れる消費税は店内が10%で出前は8%である。一方で、原価にかかる消費税は、同じ材料で作っている以上、店内で出すか、出前かで違いはない。出前の売上げに係る消費税が8%で、仕入れにかかる消費税が8%ならバランスがとれるが、消費税が10%の仕入れがあればお店にとっては、損ではないか、出前はやめて店内での営業に専念した方がいいのではないかと思えるかもしれない。
しかし、消費税はあくまで消費者(お客さん)が負担するものであり、お店は税務署の代わりに徴収し納税しているにすぎないし、仕入れにかかる消費税は控除できる。売上げにかかる消費税よりも控除額の方が多ければ、還付を受けられる。したがって、消費税額を除いた基本的な収支には影響はないはずである。

もっとも、仕入れ税額控除の適用を受けるためには、仕入れの事実を証明する書類として、取引内容の帳簿への記録・保存と請求書の保存が必要である。軽減税率導入後は、仕入れた品目ごとに消費税率が異なるため、仕入れ先から交付される請求書に仕入れた品目の消費税額が明記されている必要がある。この税額が記載された請求書を「インボイス(適格請求書)」という。インボイス制度の本格導入は、2023年10月からで、消費税率引上げ(即ち軽減税率導入)からタイムラグがあるが、それまでの期間も、請求書には8%が適用される品目と10%が適用される品目を区分して記載してもらう必要がある。また、経過措置は設けられているが、売上げ、仕入れ両方において、10%税率適用分と8%税率適用分は区分経理する必要がある。
免税事業者からの仕入れは仕入れ税額控除の対象とはならなくなるため、取引を回避される可能性がある。また免税事象者自身の仕入れにも消費税はかかるが仕入れ税額控除は受けられない(価格転嫁は可能)。課税事業者に転換し、請求書等の作成や区分経理を行う免税事業者も出てこよう。
他方で、消費税導入の影響緩和策として、クレジットカード利用者の2%分をポイントとして還元する制度を導入するという話もあり、実現すれば、お店は対応を迫られよう。
インボイスと帳簿の整備、ポイント還元を契機として取引のキャッシュレス化が進めば、税務当局への何らかの報告や事業者向けの番号制度と結びつけることで、不透明とされてきた事業者の所得の把握も容易になるかもしれない。

ちなみに、筆者の近所のおそば屋さんは出前をやっていない。

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金融調査部
制度調査担当部長 吉井 一洋