不死鳥トランプ大統領の支持率アップ
2018年05月22日
米国のトランプ大統領の支持率(※1)は、就任当初から「支持するApprove」が「支持しないDisapprove」を下回り続けており、就任一年目の平均支持率は38.4%と戦後の歴代大統領と比べて最も低い。また、就任5四半期目の支持率(39.1%)も前期よりはアップしたものの、歴史的に低水準のままだ。一般的には、就任当初はご祝儀代わりに支持率は高めに出るものだが、トランプ大統領の場合、大統領選挙の一般投票の得票数が、民主党のクリントン候補よりも約300万票少なかったという事実が反映された可能性がある。
ただ、見方を変えれば、トランプ大統領の支持率は底堅く推移しているとも解釈できる。具体的には、共和党支持層からは8割以上の支持を集める一方、民主党支持層は1割に満たない。過去を見ても、野党支持者からの支持率が低めなのは普通だが、それでも20~30%はあり、トランプ大統領のケースは極端である。さらに、無党派層の支持率も三分の一程度に留まる。このように、共和党支持層と民主党支持層では、トランプ大統領に対する見方に大きなギャップがある。
では、トランプ大統領の実績はそこまで芳しくないのであろうか。事実として、就任一年余りで、複数の閣僚やスタッフが彼の下を去っている。公私混同で更迭という、そもそも人選が適当であったか疑問視されるケースがある一方、ティラーソン前国務長官のように、主要ポストでも大統領と意見が合わずに解任されるケースも見られる。最近も、閣議でトランプ大統領に罵倒された閣僚が辞意を漏らしたという報道があった。政権末期ならいざ知らず、短期間で頻繁に交代することは異例であり(※2)、トランプ大統領のワンマンぶりは、ビジネスマン時代とあまり変わらないようだ。
一方、株価や雇用者数といった経済データを確認すると、就任前に比べて、株価は一時3割アップ、雇用者数も約300万人増と、歴代と比べて遜色ない実績を上げている。オバマ前大統領のように、景気後退の真っ只中に就任すれば、当面は前任者の失政に責任転嫁でき、スタートの水準が低い分、自身の実績はアピールしやすい。だが、好況時にバトンタッチされたトランプ大統領の場合、スタート時点で既に水準が高く、一段の積み上げは容易でない。ただ、就任初期であれば、特に何もしなくても前政権からの惰性で前に進む可能性がある。その点、トランプ大統領は、昨年末に成立させた税制改革という実績がある。
そのようなトランプ大統領の支持率が、不支持率よりも低いという関係は変わらないものの、4月下旬から徐々に上昇し、5月半ばには40%超と約1年2カ月ぶりの高さになっている(※3)。日本の安倍内閣の支持率と逆転した格好だ。11月の中間選挙に向けて支持率を高めたいトランプ大統領からすれば、ここもとの自身の態度が評価されているためと気を良くして、対外的に強硬な姿勢をさらに強めていく恐れがある。
(※2)例えば、国家安全保障担当の大統領補佐官は3人目だが、現職のボルトン氏は北朝鮮から激しく非難されており、史上初の米朝首脳会談の実現に向けて、ディールのための材料にされる可能性がある。
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