2017年11月14日
当然のことだが、人間は自分にとって「負担」が増える話を避けたがる。とは言え、先月実施された衆議院選挙において、未だに「消費税は上げさせません」などと訴える政党が存在していたことに少々驚いた。加えて、有権者のインタビューでも「消費税引き上げだけは絶対に許せない」といった主旨のコメントが数多く報道されたていたのも意外であった。どうも日本人は“税金”という名目で「負担」が増加することを極端に嫌がる国民性なのだろうか?もしかすると、かつての士農工商時代の厳しい“年貢の取り立て”イメージがDNAに染みついているからだろうか?
個人的に消費税は非常に公平性の高い「負担」だと考えている。まして、今回は緩和措置として、生鮮食料品等の日常品には軽減税率が適用になる予定なので、我々庶民にとっての負担感は限定的である。蛇足だが、8%より10%の方が計算し易いし、ひょっとしたら財布の1円玉が減って小銭入れが膨れなくなるかもしれない。つまり、次の消費税の引き上げは、実質的に所得は目減りするのだからウエルカムとは言わないまでも、許容できる範囲と考える。そして、今後も一定の「給付(benefit)」を国に求めるのなら、国際比較の中で更なる消費税の引き上げ(「負担(cost, burden)」増)も検討せざるを得ないだろう。
思うに、為政者はもっと単純に国際的な比較を国民に示す必要があるのではないか。消費税の導入議論の華やかなりし頃はそういった国際比較の情報も数多く流れていたが、直近の選挙報道等においては、残念ながら与野党を問わず「消費税の国際比較」に関する言及は乏しかった。
GDP第3位の経済大国として、日本は世界中で自動車等の高額品を売って利益を得ている。それにもかかわらず、世界140以上の国や地域が採用している消費税の税率においては下位である(それも、最下位ではないが、かなり低い)ことを国民にしっかり継続して伝えるべきである。(図表1)

そして、合わせて「国民負担率」の低さについても発信すべきであると思う。これだけ高齢化が進んでいるにもかかわらず、所得に占める「国民負担率」は先進国の中でも決して高くない。一部には「国民負担率」には国が抱える財政赤字の解消(≒国の借金の返済)に対する潜在的な負担が考慮されていないから、低くて当たり前との指摘もあるが、そもそも国力や財政方針には、国ごとに大きな差があるので言い出したらきりがない。(図表2)

おそらく余程のことが無ければ、2019年10月に消費税は10%に引き上げられる。コーポレートガバナンスや働き方改革等、欧米に比して旧態然とした日本の慣行に対して、いよいよメスが入ってきた感がある。これは主に「給付」する側(会社や組織)の意識改革である。
一方で、「負担」する側である国民の意識改革は一向に進んでいない気がしてならない。「負担」と「給付」は多くの場合トレードオフでなくてはならないのだ。この世に魔法の杖は無いとすれば、ディズニーランドではないが「入場料を払わないでアトラクションは楽しめない」ことを忘れてはいけない。
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- 執筆者紹介
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マネジメントコンサルティング部
主席コンサルタント 橋本 直彦
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