オランダ議会選挙はフランスとドイツの選挙の前哨戦

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2017年02月16日

  • 山崎 加津子

2017年はドイツ、フランスなど欧州主要国で国政選挙が相次ぐ。その先陣を切るオランダ議会選挙(3月15日)まであと1カ月となった。各種世論調査によれば、与党の自由民主国民党(VVD)と労働党(PvdA)は前回の2012年の議会選挙と比べて大幅に議席を失うと見込まれる。オランダ議会の定員は150議席で、2012年の総選挙ではVVDは41議席、PvdAは38議席をそれぞれ獲得した。ところが、直近5つの世論調査の平均値ではVVDは24議席、PvdAはわずか12議席の獲得にとどまるとの結果が出ている。

代わって大きく議席数を増やすとみられるのが、EU離脱や反イスラムを掲げるウィルダース党首率いる自由党(PVV)である。PVVは2012年の選挙では第3党となる15議席だったが、直近5つの世論調査の平均値は28議席で第1党に躍進することが示唆されている。世論調査の中にはPVVは36議席と前回の倍以上の議席を獲得するとの予想もある。ウィルダース党首は2016年のBrexit(英国のEU離脱決定)とトランプ氏の大統領選出を大いに称賛し、オランダも同様に新しい世界を目指すべきと気勢を上げている。もっとも、PVVが3月の議会選挙後に与党となる可能性は低いと予想される。戦後のオランダでは一政党が過半数の議席を獲得したことは一度もなく、常に連立政権が形成されてきた。今回もPVVが単独で過半数の議席(76議席)を獲得する可能性は極めて低い。そして、他の政党は軒並みPVVとの連立政権の可能性を否定している。

とはいえ、オランダの3月の選挙の注目点は、やはりPVVがどこまで議席を伸ばすかである。過去最多は2010年の議会選挙での24議席だが、これを超えて30議席前後を獲得した場合、PVVを除外した連立政権作りが難しくなると懸念される。オランダ議会選挙で与党が大きく議席を減らすことは過去にしばしばあり、その都度、連立政権の組み合わせも変化してきた。ただ、今回はPVV以外で議席を伸ばしそうな政党が保守系のキリスト教民主同盟(CDA)、左派の緑の党、高齢者の権利擁護を訴える50プラスと、政策の重点をどこに置くかがばらばらである。ルッテ首相率いるVVDは議席数を大きく減らしながらも第2党になりそうで、次期連立政権作りの中心になると見込まれる。しかし、過半数の議席確保に5つ以上の政党が必要になる可能性があり、政策のすり合わせが難航すると予想される。ルッテ首相は現時点では否定しているものの、2010年に誕生した第1次ルッテ政権のようにPVVに閣外協力を仰ぐ可能性を完全に否定することはできないと考える。

オランダが国内の分断という問題とどう取り組むかはもちろん注目点だが、他の国々にとってより重要なのは、PVVが大躍進を遂げれば、それは志を同じくするフランスの国民戦線(FN)のルペン党首や、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」のペトリ党首を勢いづかせることである。この3党は1月下旬にドイツで合同の政治集会を開催し、欧州の右派の結束を呼びかけたばかりである。劣勢に立たされていると見受けられる各国の既存政党は、FNなどをポピュリスト政党と批判するばかりでなく、その支持者たちが抱えている不安や不満に対してきちんと向き合う姿勢を示すことが喫緊の課題である。

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