「働き方改革」における管理職の役割
2017年01月18日
「働き方改革」の言葉は、新聞やテレビの報道で日々耳目に触れるほどに、話題となってきている。大和総研では従来から、「働き方改革」は経営改革であり人事のみの問題ではないという考えのもと、改革はトップダウンで進めるべきとの主張をしてきた。数年前から、企業の経営に関わる方々と、「働き方改革」や「健康経営(※1)」について議論をしているが、3年前くらいまでは、少なくない数の経営の方々から、「その話は人事や健保組合にしてほしい」と言われたものであった。今や、経営トップが「働き方改革」を経営課題として取り上げることも多くなっており、3年前と比較すれば、隔世の感がある。
しかし、トップの考え方を変えるだけで、実際の働き方を変えていくことは容易ではない。日常業務の中で、すでに確立された仕事のフローがある中、残業規制や年休取得の制度だけを充実させたとしても、社員ひとりひとりは困惑するだけでなく、制度が活用できないことに対する不満まで溜まってしまう。
これらを解決するためには、管理職の役割が重要になってくる。管理職は、積極的に定時で退社するとか、自ら年休を計画的に取得するといった制度活用の先導役になることはもちろん必要であるが、それと同様に重要なことは、部下の働き方や健康状況に配慮することを管理職の重要な職務として位置付けることである。なぜならば、現場の長の意識を変えなければ、現場の社員の行動は変えられないからである。例えば、一部の社員に仕事が過重になっている場合には、仕事の再配分が必要であるし、また部署全体で残業が多くなっている場合には、仕事のフローや仕事内容自体の見直し、あるいは増員などの交渉も必要であろう。これらは、仕事の内容を理解している現場の長でなければ、気づけない。
会社としては社員の働き方に関する制度が充実しているにも関わらず、現場社員にその制度活用が浸透していないケースは多々ある。また、会社全体で号令をかけても、部署によってその活動に濃淡があることもよくあることである。全社的な働き方改善はトップダウンで進めるべきであるが、その具体的な施策については、管理職が部署に適した方法や施策を考え、実施する体制を整えていくことが、「働き方改革」の実現のための近道であると言えよう。
(※1)「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標。
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