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官製ビジョンはどこまで響く?

2016年10月06日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 金融調査部長 保志 泰

9月に金融庁が公表した「平成27事務年度 金融レポート」は、昨年公表された「金融行政方針」の進捗状況や実績等を評価するレポートと位置づけられている。一昨年の「金融モニタリング基本方針」に対する昨年の「金融モニタリングレポート」という関係と比較すると、両方から「モニタリング」の言葉が取り払われ、金融庁の役割はもはや「監督」だけではないという意図が、さらに強く感じられるものとなった。

これら金融行政方針や金融レポートからは、当局が描く理想の金融システム像が伝わってくる。その理想像に対する異論は少ないだろうし、それの実現に向けて当局が行おうとしている行動も十分理解されるものだ。もっとも、こうした努力が、民間の金融機関、事業会社、そして個人、ひいては外国の主体も複雑に参加する金融システム全体に対して、どこまで響くか、という点に関しては、見方が分かれるかもしれない。

近年、政府当局が民間部門のあるべき理想像すなわちビジョンを描き、何らかの影響を及ぼそうとする行動が増えているように感じる。日銀の金融政策行動も、その一つと言えるだろう。ここ数年の金融緩和政策の底流には、金融機関がもっとリスクを取った貸出しを行うのが本来あるべき姿だとの考えがあろう。しかし実際には、金融機関行動がその理想に近づいているとは言い難い。

産業のあるべきビジョンを政府が設定、誘導し、民間が従うというスタイルは、戦後の高度成長期における日本の成功体験と言える。政府の役割は1990年代に入って転換し、事後チェック型の行動が取られてきたが、最近の経済成長の行き詰まりは、民間部門が理想通りに動かないことが原因ではないかとのフラストレーションが政府内に募ってきたようにも見受けられる。

しかし、グローバル化が進み、各経済主体の行動も多様化が進んでいる。企業が牽引する供給型経済から、消費者の主体的行動が原動力となる需要型経済にシフトし、政府の力が及びにくいところが経済ダイナミズムの中心地になりつつある。

現代の経済システムにおいてダイナミズムを高めるためには、一つのビジョンを設定して突き進むというよりは、民間部門の自由度を高めていくことが最も効果的なやり方ではないかとも思う。しかし、民間にとって自由度が高まる施策については、政府内で意見がばらつくケースもあり、なかなか理想通りには実現しないという現実もある。ビジョンに関して各主体間で対話を深めることが重要なのはもちろんだが、政府内でベクトルを揃えることもダイナミズム回復に向けた一つの原動力となり得るのではないだろうか。

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保志 泰

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