個人型確定拠出年金、専業主婦も積み立てが続けられるようになる

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2016年07月11日

2016年5月24日に「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が成立した。これにより、2017年1月から、新たに専業主婦や公務員等が確定拠出年金の加入対象者となり、ほぼ全国民が活用できるようになる。

確定拠出年金には、「企業型」と「個人型」があるが、加入対象が広がるのは「個人型」である。これまでは、民間のサラリーマンが加入する「企業型」の導入が広まってきたのに対し、自営業者等が加入する「個人型」は導入の拡大が遅れていた。加入者数は、平成28年4月末現在で企業型の578万人に対し、個人型は26.2万人(出所:厚生労働省「確定拠出年金の施行状況」)と、企業型の約1/20である。これまで、確定拠出年金における制度改正は何度も行われてきたが、企業型を対象とした内容が多かった。

今回の法改正によって「個人型」の制度見直しが進んだことは、大きな前進といえる。これまで、企業型の加入者が離職により専業主婦になった場合は、個人型の加入者ではなく運用指図者となり、これまでに積み立てた資産の運用は行えるが、掛け金を新たに積み立てることはできなかった。転職して公務員になった場合も同様であった。しかし、今回の法改正により、専業主婦や公務員等も確定拠出年金の加入対象者となり、積み立てが継続して行えるようになった。積み立てを中断せず少額でも継続することは、老後に向けた資産形成に役立つはずである。

加入対象者拡大の背景には、離職や転職、女性の社会進出が拡大するなど、働き方が多様化する中で、誰もが就労形態によらず等しく自助努力できる機会を求める声が、高まりつつあることがあげられる。確定拠出年金は、自助努力で老後の資産形成ができる私的年金制度であり、手厚い税制面の優遇措置も施されている。多くの国民が積極的に制度を活用してほしいと、期待している。

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執筆者紹介

政策調査部

研究員 佐川 あぐり