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オフショアを巡るマネーフローとパナマ文書

2016年05月10日

政策調査部 主任研究員 神尾 篤史

近年、オフショアへ流れこむ資金が増加傾向にある。オフショアとはケイマン諸島、パナマなどを指し、一般的に低税率(もしくは無税)、事業体の設立が容易、多様な金融関連サービスが提供されているなどの特徴を持つ。

国際決済銀行(BIS)の統計によると、世界(欧米、日本など31ヵ国・地域)の銀行のオフショア(香港、シンガポール、ケイマン諸島、パナマなど19ヵ国・地域)への与信残高は、2015年第4四半期末で2.3兆米ドルと2005年末と比べて2.4倍に増加した。内訳を見ると、残高の4割弱はオフショアに所在する資金運用会社(ヘッジファンドなど)向けなどである。また、国際通貨基金(IMF)によると、オフショアへの証券投資残高も2015年第2四半期末で4.5兆米ドルと2005年末と比べて2.3倍に拡大した。

そうした資金の多くは欧米から流れていると思われがちだが、実は日本からも多くの資金がオフショアに向かっており、近年では増加傾向にある。邦銀のオフショア向け与信残高は、2015年第4四半期末で5,663億米ドルであり、2005年末と比べ3.6倍に増加している。同様にオフショアにおける日本からの証券投資残高は、2015年第2四半期末には6,538億ドルとなり、2005年末と比べて1.9倍の増加となっている。

気になるのは、それらの資金がオフショアを経由してどこへ向かっているかであるが、全体像の把握は難しい。かろうじてデータを得ることができるのは、オフショアからの国・地域別証券投資残高で、米国向けの投資が多い。

タックスヘイブン(租税回避地)であることが通例であるオフショアを活用する行為に対しては、一般市民の感情は好意的ではないことが多い。それは最近話題のパナマ文書に関わる一連の騒動を見ても明らかだ。騒動の背景にあるのは、オフショアが脱税や犯罪を隠ぺいするための隠れ蓑として使われているのではないかという漠然とした不信感や、オフショアの利用が主に大企業や富裕層に限られるという不公平感だろう。脱税やマネー・ロンダリング目的でオフショアを悪用することはもちろん許されない。

だが、オフショアの利用が悪いものであるという単なる印象論に与することはできない。例えば、ビジネスの障害や租税負担が小さい国・地域で企業が事業を行うことは、その企業のステークホルダーにとって合理的な活動である。また、オフショアを活用して資産運用をしても本国の税制に従って漏れなく所得を申告し、納税していれば問題はない(ただし、企業と個人のどちらにおいても過度に節税を行うことに対する国際的な批判は高まっている)。

現在、OECD等では国際課税原則の再構築、各国・地域での多国籍企業の活動概況について課税当局間での情報交換などが行われている。こうした活動は、オフショアを悪用した活動を抑制し、またごく一般的な感覚として人々が抱く不信感や不公平感を拭うことに役立つ可能性がある。今後のオフショアを巡る国際的な動向を見守りたい。

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神尾 篤史

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