大切な観光資源の発掘

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2016年04月07日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

3月30日、鎌倉の鶴岡八幡宮で修繕工事が行われていた段葛が完成し、お披露目のイベントが催された。折しも桜が満開に近い状態で天気も良く沿道は多くの人であふれかえっていた。特に外国人観光客とみられる人々が多く周辺の観光名所も盛況のようであった。

東京・銀座の中央通りの人通りが日本人より外国人観光客の数の方が多いのではないかと思われるようになってもう3年ほど経ったであろうか。昨年の訪日外国人は1,973万人(日本政府観光局)と2,000万人に迫る勢いである。東日本大震災の影響で落ち込んだ2011年の621万人(同)の3倍以上の水準となっている。2016年に入っても1、2月合計で374万人、前年同期比43.7%増(同)と勢いは衰えていない。日本の観光産業は外国人観光客の増加により大きく開花しそうである。

日本の経済全体への寄与も大きくなってきた。国際収支統計(日本銀行)で旅行収支をみると、2015年の受取は3兆837億円に達している。収支としてもこれまで長年にわたって続いていた赤字が解消し、1兆1,218億円の黒字となった。いまや観光は立派な「輸出産業」になった。

さて、今後の課題は供給サイドであろう。鎌倉の沿道が人であふれかえっていたように日本の主要観光地は外国人でいっぱいになっており、宿泊施設の不足が指摘され、民泊が実態として増加、政府も規制改革に向けた検討を行っている。こうした受け入れのためのキャパシティの不足解消も課題であるが、地方創生につなげるためにも地方で様々な観光資源を発掘し、外国へのプロモーションを図っていくことが必要であろう。訪日外国人の内訳をみると、84.3%(2015年、日本政府観光局)はアジアからであり、とりわけ中国、韓国、台湾、香港の観光客が多い。近隣の東アジア諸国により日本を理解してもらい、これまでの有名観光地だけでなく様々な地方に足を延ばしてもらうことは、地方経済の活性化にも役立ち、需要を地域分散することでキャパシティ不足を緩和することにつながろう。観光資源の発掘はなにも名所旧跡の掘り起こしばかりではない。外国人観光客にも楽しんでいただける各種のイベントを創り出す工夫も大切だ。それは雇用を生み出すことにもつながっていこう。

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