成人式は、何歳で迎えることになるのか?

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2016年03月09日

現在ならば、成人式は、「成人」となったことのお祝いなので、20歳で迎えるというように考えるのが普通だろう(例えば学年ごとに行い、式の当日には20歳でない者もいることもあるが、ここでは話を単純化するため脇に置いておく。以下においても、話を単純化しているのであしからず)。この成人式を20歳で迎えるという考え方、つまり「成人=20歳以上」という考え方が変わる日がやってくるかもしれない。

これにつながりそうな動きがある。ちょっと前なら、国政選挙で投票できる選挙権は、成人になってから、20歳になってからと考えていたのものが、今年の夏からは、18歳になれば投票できるというように変化してきている。2015年6月に成立し、公布された「公職選挙法等の一部を改正する法律」によるものである。

また、自由民主党の「成年年齢に関する特命委員会」で、民法の成年年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げることや、その他の20歳を基準とする法令も基本18歳を基準とする方針が提言としてまとめられ、2015年9月17日に「成年年齢に関する提言」として公表された。なおこの中で、少年法の適用対象年齢についても18歳未満(現行は20歳未満)が妥当だとされており、法務省では、少年法の適用対象年齢を含む若年者に対する刑事法制の在り方全般について検討を行うため「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」が設けられている。

ところで「成人=20歳以上」という考え方にもっとも影響を与えていると思われる民法についてはどうかというと、「成年年齢に関する提言」以降、法務省で検討会などが設けられたという話は聞かない。過去に法務省の法制審議会が、民法の成年年齢を18歳以上に引き下げるのが適当であるとする「民法の成年年齢の引下げについての意見」を採択し、法務大臣に答申している(2009年10月28日)こともあり、新たに検討会などを設けないのかもしれない。ただ法務省に最近動きがないわけではない。例えば、2015年10月7日の岩城法務大臣官邸記者会見の概要には「選挙権年齢が18歳に引き下げられました。そこで民法の成年年齢を引き下げるための具体的な準備を開始する必要があると考えています。」とある。

また、2016年2月25日に、日本弁護士連合会から法務大臣に、民法の成年年齢の引下げには慎重であるべきとの「民法の成年年齢の引下げに関する意見書」(2月18日に取りまとめ)が提出されるなどの動きもある。

このような慎重論が唱えられる理由には、例えば、未成年者の悪徳業者からの被害の予防、救済に役立っていると思われる民法の未成年者の取消権の問題がある。仮に成年年齢が引き下げられたら、未成年者の対象から外れ、この取消権の恩恵を受けられなくなった者が、被害に遭いやすくなったり、救済され難くなったりしないかというものである。その他にも、慎重論側からは民法以外にも引下げが波及して問題が起こる可能性なども指摘されている。

「民法の成年年齢の引下げ」と一言で言っても、民法を改正して終わりというわけにはいかないようである。民法の改正による影響もあれば、他の法令への波及などもあり、簡単な話ではない。仮に民法の成年年齢を引き下げるとなれば、社会的に大きな影響を与えることになるので、今後も十分な検討・準備がなされるべきと考える。

民法の成年年齢の引下げについて議論が進められている以上、「成人式は、何歳で迎えることになるのか?」についても考える日が来るのかもしれない。

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