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「希望出生率」にかける希望

2016年02月16日

経営コンサルティング第一部 主任コンサルタント 平田 裕子

「希望出生率」という言葉を見聞きする機会が増えた。「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」(平成26年12月)でも登場するが、昨秋安倍首相が発表した「新・三本の矢」の1つの的に「希望出生率1.8の実現」が掲げられたことで、再び注目されることとなった。

「希望出生率」は、{既婚者割合×夫婦の予定子ども数+未婚者割合×未婚結婚希望割合×理想子ども数}×離別等効果により算出される(※1)。第14回出生動向基本調査(※2)(2010)によると、既婚者は平均2.07人の子どもを予定しており、独身者は89%が結婚意欲を持ち平均2.12人の子どもを望んでいるという。これらの数値をあてはめると、{34%×2.07人+66%×89%×2.12人}×0.938≒1.8と導き出される。「最近の若者は…」という言葉も聞かれるが、こうした希望に関する数値は、同データをとりはじめた第8回調査(1982)から大きく低下していない(図表1)。しかしその間、日本の合計特殊出生率は1.77から1.39まで大幅に下がった。近年の少子化の主な要因は、希望と現実の差が広がってしまったことが一因と言える。結婚・子ども数の選択は個人の自由であるものの、希望を叶えられない現実があるのであれば、「希望」に希望をかけ、叶えられる環境を整備して少子化対策に繋げようということである。

さて、どうすれば希望を叶えることができるか?希望の出生数に満たない理由として、前述の調査では、6割の夫婦が「子育て・教育にお金がかかりすぎる」を選択している。先日、某自治体で女性会議に同席する機会を得た。そこで、第2子を持つことへの障壁について尋ねたところ、若い母親達から「私達は良い時代を知りません。2人目が欲しくても将来が不安です」という意見が出た。これに対して、第1子が小学生となり既に第2子を持つ母親達からは「経済的なことを考えたら無理だったかも…」と苦笑いの意見が。そして、中学生を持つ母親達からは「こんなにお金がかかるなんて知らなかったのよ」と悲痛な(?)意見が。それぞれの時代背景を示す興味深いやりとりだった。現在、結婚・出産適齢期と言われる世代は将来を楽観視できない。そこには、子育てにかかる費用の問題だけでなく、雇用、年金、社会保障など様々な問題が絡んでいることは想像に難くない。

こうした経済・社会的な問題を解決していくことはもちろんだが、出生数に影響を与えるであろう様々な因子に関する調査研究も多くある。例えば、「育児休業制度は出産を促進する」、「男性の家事・育児参加は出生率にプラス」(※3)、「女性の長時間労働は出会いの阻害要因になる」(※4)などである。ひとつひとつの因子を検証し、全体として結婚・子育てしやすい環境を作り出すことが求められよう。政府は昨年10月、出生率と出生率に影響を及ぼす諸因子を地域別に分析した「地域少子化・働き方指標(第1版)」を発表した。多くの自治体が地方人口ビジョンで目標とする出生率を掲げるなか、施策検討に向けた貴重な情報となろう。一方で、例えば、秋田県では長時間労働の雇用者割合が少ないにも関わらず出生率が低く、鹿児島県では3世代同居率が低いが出生率は高いなど、相関は単純ではない。地域性、住民の気質、文化などにより、ボトルネックは異なる。各自治体はまずは近辺のちょっと出生状況の良い地域から参考にしていくのが一策かもしれない。

国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」(各年)を基に大和総研作成

(※1)日本創成会議・人口減少問題検討分科会「成長を続ける21世紀のために『ストップ少子化・地方元気戦略』」(平成26年5月8日)
(※2)国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)-第Ⅱ報告書-わが国独身層の結婚観と家族観」および「第14回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)-第Ⅰ報告書-わが国夫婦の結婚家庭と出生力」を指す
(※3)内閣府経済社会総合研究所「少子化の動向と出生率に関する研究サーベイ」(2011年3月)では、出生率の動向に関するこれまでの主要な研究成果についてとりまとめられている
(※4)内閣府経済社会総合研究所「少子化と未婚女性の生活環境に関する分析」(2015年8月)

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経営コンサルティング第一部
主任コンサルタント 平田 裕子