インバウンド観光という輸出産業

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2014年12月18日

  • 岡野 武志

近隣諸国の経済発展や為替水準の円安方向へのシフトなどを背景に、訪日外国人旅行者数が増加している。2011年の6百万人台から12年には8百万人台に増加し、13年は初めて1千万人を突破した(※1)。今年も第3四半期(7-9月期)までで既に1千万人近くに達しており、通年では昨年実績を3割程度上回る規模が見込まれる。日本は、海外から日本を訪れる旅行者(インバウンド観光)を2020年に2,000万人、2030年に3,000万人に拡大することを目指しており(※2)、訪日キャンペーンや受入環境の整備などが進められている。

インバウンド観光の拡大に伴い、訪日旅行者の国内での消費額も増加しており、今年第3四半期の訪日消費額は、四半期ベースで初めて5,000億円(速報値)を超えた(※3)。今年第3四半期までの累計額は、既に昨年の年間実績を上回る1兆4,677億円(同)に達しており、通年では2兆円規模が視野に入る。今年第3四半期では、訪日消費額の1/3程度を買物代が占めており、訪日旅行者数が増加すれば、買物という「輸出産業」も拡大することが予想される。インバウンド観光の買物は、需要地までの輸送費や通関の手間などを旅行者が負担する効率の良い「輸出」といえよう。

主な商品別にみると、「菓子類」や「その他食料品・飲料・酒・たばこ」などの購入率が高く、「化粧品・香水」や「医薬品・健康グッズ・トイレタリー」なども人気がある。今年10月からは、従来、消費税免税の対象となっていなかった食品類、飲料類、化粧品類、薬品類なども免税の対象となっており、これらの商品ではさらなる「輸出」の増加が見込まれる(※4)。各地域で免税店が増えれば、潜在的な需要の喚起や誘客の拡大につながり、各地域の名菓や名酒、特産品などの販売増によって、地域経済が活性化することも期待される。

しかし、「平成24年観光地域経済調査(※5)」によれば、法人経営の観光産業事業所の主な仕入・材料費、外注費の1/3以上が都道府県外に支払われたとされている。都道府県外への支払いは、石油・石炭製品に次いで、加工食品・調味料や農林水産物などへの費用が大きい。日本は周知の通りエネルギーの海外依存度が高く、食料自給率(平成25年度)も生産額ベースで65%にとどまっている(※6)。インバウンド観光に伴う「輸出」を地域経済の活性化につなげるためには、地域資源を活かしたサプライチェーンの確立が重要であろう。

(※1)「訪日外客数の動向」日本政府観光局(JNTO)
(※2)「成長戦略で、明るい日本に! ≪詳細版≫」首相官邸
(※3)「訪日外国人消費動向調査」観光庁
(※4)「消費税免税制度を活用した外国人旅行者の誘客について」観光庁
(※5)「観光地域経済調査」観光庁
(※6)「平成25年度食料自給率等について」農林水産省

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