師走と酒の席での宝

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2014年12月16日

  • 中里 幸聖

2014年も師走に入り、何がというわけではないが気分的に慌ただしい。特に今年は衆院総選挙が重なったので、せわしなさが増したように思われる。締切りの関係で、本コラムは衆院選の結果を反映できていないが、候補者関係者の勝利の酒と反省の酒、それと選挙事務等に駆り出された方々の慰労の酒がそこここで酌み交わされたのではないだろうか。

一方、12月に入ると忘年会やクリスマス関連行事が色々と開催される。わが国のクリスチャンは約191万人(2012年末、文部科学省「宗教統計調査」)だそうで、総人口の2%未満ということになるが、日本でクリスマスを祝う人はクリスチャン人口を大幅に上回ることになろう。年末の大晦日から元旦にかけて、そして松の内の間には大勢の人が神社仏閣に初詣に出かける。初詣客が多い神社の参道の入り口辺りでは、何故かキリスト教の聖書の言葉をマイクで語っている伝道師みたいな人が時折見られる。これだけ堂々と他宗教の行事に喧嘩を売っているように見える現象も面白いが、わが国が平和である証しでもあろう。

閑話休題。忘年会はもちろんのこと、クリスマス関連行事でも酒類が活躍することが多い。真偽は定かではないが、最近の若者はあまり飲み会に参加しないという話もあるものの、師走は全体的にいわゆる「飲みュニケーション」が活発化する時期であろう。

酒類が必須かと問われれば、必ずしもそうではないのであるが、さまざまな人との交わりは、新たなアイデアや発想の転換の宝庫である。酒類はそうした交わりを演出するアイテムの一つ、人の輪を醸す素材であるが、時にマイナスな方向に作用するのは注意したい。

酒類は、醸造酒(日本酒、ビール、ワインなど)、蒸留酒(焼酎、泡盛、ウイスキーなど)、混成酒(梅酒、リキュール、シェリー酒など)に大別される。焼酎は悪酔いしないなどとの話もあるが、私自身は日本酒の方が悪酔いしない気がする。飲みながら友達と考えたところ、焼酎の方が量を飲めてしまうので、結果として取り込むアルコール度数が多くなっているのではないかとの推論に達した。そう言えば、酔いは飲んだ量そのものよりも体に取り込んだアルコール度数によるという研究結果があるという話を、これまた飲み会の席で後輩から聞いたことがある。

飲み会の席ということでは、昨年から何度かレポートにしている国土強靱化に絡んで(※1)、ナショナル・レジリエンスという言葉が分かりにくいという話題になった。「レジリエンス」は元々心理学の用語だというのは、政府の「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」の資料でも触れられているので知ってはいたが、「レジリエンスは死なない力、やられない力」との説明には大変納得がいった。近年のわが国では海外発の概念をカタカナ表記にしてそのまま使う傾向が見られるが、一般国民に納得させるためには、やまと言葉に翻訳するのが望ましい。せめて、漢語にするくらいの努力は、明治の先人達を見習うべきだと思うが、いかがだろうか。

まるで飲み会の席での会話のようなコラムになってしまったが、雑多な会話の中から新しいヒントや発想が生まれることは間違いない。もちろん、公的な会合もさまざまなものを生み出すが、私的な会合の中からより多くのものが展開していくのではないだろうか。その際、酒類は必需品ではないが、特に酒好きな人にとっては、忘年会シーズンは新たなアイデアを生み出す宝庫として活用したいものである。自戒も込めて、くれぐれも飲み過ぎないように。

(※1)例えば、「始動する国土強靱化、基本法成立~国土強靱化に関する基本法、政策大綱とインフラ更新検討状況~」(大和総研リサーチレポート、2013年12月13日)など。

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