スマホの正確な普及率は?
2014年05月22日
関心の高まりを反映してか、最近スマホの普及率(※1)の数字をよく見かけるが、いろいろなものがある。どれが正確なのだろうか。
最近一番大きく報道されたのは、内閣府「消費動向調査」の54.7%だろうか。しかし、これは二人以上一般世帯が対象の数字である。世帯主が保有していなくても子が保有していれば、保有世帯にカウントされる。また、1,678万の単身世帯を除くのは問題であろう(※2)。
この調査は本来テレビや洗濯機など世帯全体で使用する耐久消費財の普及率を調べることが目的であり、各個人がそれぞれ使用するスマホ普及率を確かめることなどには注意が必要である。
情報通信白書でも使われる総務省「通信利用動向調査」も世帯調査で、2012年末でスマホの普及率は49.5%である。この調査も、もともとの主対象は固定電話で、やむを得ない面はある。ちなみに、固定電話の世帯普及率は79.3%にまで低下した。世論調査で多用されるRDD法(※3)もいずれ使えなくなる可能性がある。
民間では、インターネットによる調査結果もある。しかし、スマホもPCも使用しない人が普及率を大きく左右するので、論外であろう。しかも、インターネット調査にはまだ偏りがある(※3)。
個人対象かつ面接法の調査には、例えば、中央調査社「パーソナル先端商品の利用状況」がある。スマホの普及率は、人口補正(※4)を行った上で41.5%である。調査法は、最良とされる個別面接聴取法だが、サンプリングは最良とされる住民基本台帳ではなく住宅地図によっている(※3)。さらに、回収率は30%程度にすぎない。
一方、消費動向調査には単身世帯のみの集計値もあり、当然個人対象となる。次善の郵送調査法ではあるが回収率は57.4%ある。これと中央調査社調査の結果を年代別に比較したのが下図である。
2つの結果は、全体、年代別ともほぼ一致している。ベストではないが、現在調査されている中では一番正確かもしれない。スマホの普及率は、2014年第1四半期で40%程度となる。ただし、消費動向調査については人口補正を行っており、行わないと24.2%に低下する。
なお、図の年代別をみると、20代の普及率は既に8割だが70歳以上では10%以下である。一方、スマホ以外(ガラケー)では中高年が高い。いずれにしても、携帯全体での普及率は9割近くになっている。タブレット型パソコンは一番高い30代でも4分の1程度にすぎない。
スマホは、昔の超大型コンピュータがポケットサイズになり高速大容量通信機能が付加されたのと同じで、使いこなせれば非常に有用であり、普及すれば行政やビジネスでも有望なツールとなる。潜在的な需要は大きいはずである。中高年にもより使いやすくなり、さらに普及が進むことに期待したい。
(※1)ここでの普及率は複数保有していても1台としてカウントしたものであり、複数保有台数もカウントする100人(世帯)あたり保有数量とは異なる。
(※2)さらに、一般世帯対象なので施設等の世帯(学校の寮、病院・3か月以上、老人ホームにいる人など)は除かれるが、全体の2%程度なので問題はなかろう。
(※3)各種調査方法の特性などについては、市川正樹「経済指標を見るための基礎知識(第2回) 統計はどうやって作るのか」当社レポートを参照。
(※4)面接調査や郵送調査などでは、年齢層の高い方が回収率は高い(会いやすい)ため、スマホの普及率が低い中高年のウェイトが実際より大きくなるので、普及率は低く出る。この補正は、例えば、年齢ごとの普及率に、国勢調査などによる年齢別人口ウェイトをかけて合計する。
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