今こそ家庭における男性活躍を!(職場でいかに女子を働かせるか、と上から目線で言う前に)
2014年01月30日
今回は、女性活躍を考える上で、男性の家庭における『立ち位置』について考えてみたい。
最近では、「イクメン」という言葉も定着し男性が子育てや家事を分担するのは当たり前になってきたようにみえる。道を歩いていても子供を抱っこしたりベビーカーを押す若いパパたちがめっきり増えた。しかし、男性が公平に家事や子育てを分担しているかというと、決してそうではない。ワーキングマザーの話でよく出てくるフレーズに「家事・子育てに協力的」というのがある。男は外で仕事をして家計を支え、女は家庭という社会を守る、というかつての時代であれば、お金を稼ぐために外で働いてきたお父さんが帰宅してまで家事をやってくれるのは、協力的と言っても良かったであろう。
しかし、今日の共働きが主流の時代、女性も男性とともに働いていて経済的には互角のケースが増えている。二人とも外で稼いでいるのなら、お互いに家事も分担する責任があるはずである。つまり共働き家庭の夫にとって家事は「妻に協力してやってあげるもの」ではなく当然の義務のはずなのだ。それにも拘わらず、いまだにワーキングマザーの間では「あそこのパパは子育てに協力的でうらやましい。ウチは夫が協力的じゃないから、私はお迎えのため残業できない」というような会話が飛び交っている。実際にそれを裏付ける数字を見つけた。総務省による「平成23年社会生活基本調査 生活時間に関する結果」である。そこには子供がいる共働きと片働き世帯におけるそれぞれ夫と妻の家事関連時間が出ているのだが、ビックリするのは、共働きの夫の家事関連時間が僅か39分に対して片働きの夫(つまり専業主婦家庭)は46分と後者の方が長いのである!更に夫の労働時間は共働き8時間30分、片働き8時間22分と共働きの方が長い。
なお妻の家事時間は、共働きで4時間53分、専業主婦が7時間43分である。共働きの夫婦の場合、家事の分担は妻88%に対して夫12%に過ぎない。一方妻の労働時間は4時間34分しかなく、共働きとはいえ家庭優先となっているのだ。どうやら日本の夫は、妻が働こうが家庭にいようが、「男は家事なんかしない」と決めているとしか思えない。
女性活躍がアベノミクスの柱として注目されているとはいえ、日本企業における女性活躍の進捗度合いは、諸外国にくらべると、“too little ,too late”の観がある。多くのステークホルダーの努力により改善していることは各社CSR報告書や厚労省のデータなどからも確認できる。それでも家庭における公平な家事責任分担の進捗はその比ではない遅さだ。というか、改善しているのだろうか?と疑わざるを得ないのが率直な感想だ。しかしながら、先ほどの総務省調査では改善していると指摘しているのだ。この調査の要約版では日本人の生活習慣で顕著な特徴を15項目ほど取り上げているが、「共働きか否かにかかわらず、夫の家事時間は増加傾向、妻の家事時間は減少傾向」とある。意外な感じなので、どのくらい変わったのか見てみると、昭和61年から平成23年までの25年間で共働きの夫の場合家事時間は6分から12分へ、育児や買い物を含めた家事関連時間全体では、15分から39分へ。専業主婦のいる夫の場合家事時間は4分から9分へ。家事関連時間は17分から46分へ。???これって、増えたというのだろうか????そもそも4分や6分でできる家事って何?ゴミ出し、風呂洗い、新聞取りくらいか?小学生のお手伝いでもできる。ちなみに妻の家事関連時間は共働きの場合は4時間30分から4時間53分に増えている。「減っている」に該当するのは専業主婦の家事が5時間22分から4時間43分に減ったことだけである。これは食洗機や全自動洗濯乾燥機、中食や冷凍食品の増加などで説明できるが、それも企業活動の成果なので、主婦が怠けているというのは当たらない。
昨年から職場の生産性向上につながらない「兼業主婦(※1)」の弊害について筆者も論じ、彼女たちの背後には家事をしない夫の存在がちらついていたが、このデータを見て確信した。彼女たちは職場にいてもオチオチ家を空けてられないのである。夫が「もっと協力すれば」あるいは「自分の責任を自覚して心を入れ替えれば」、彼女たちの多くが仕事にも昇進にも積極的になり、それができて本当の男女共同参画社会に近づくのではないか。
そして、男性が家庭進出することのメリットはもう一つある。若者の間で弁当男子とか、草食系男子が増えているといわれる。中年以降の肉食系男子はそれを嘆いたりするが、私は草食系男子を作り出したのは、高度成長期のモーレツサラリーマンだった彼らだと思っている。自分や周囲の子育てを観ていても、パパの子供の遊ばせ方・扱い方は、ママからすると乱暴に見えたり、危険と感じることが多々ある。ジャングルジムの高いところに子供を無理やり登らせてみたり、凄いスピードでブランコを漕いだり。しかし、パパたちは別に大して危ないことをしているという自覚はないようで、それが夫婦喧嘩の原因になったりする。なぜパパがママに危ないと怒られてもやめないのか。基本的に男性の方が体を動かす荒っぽいことを好む傾向があると思われるが、加えて男性の方が体も大きく体力もあり、危ないことがあっても子供を守れる自信があるように見える。例えばジャングルジムから子供が足を滑らせたらママの場合キャッチできないから危険と感じてもパパなら自分がキャッチできるから大丈夫と感じるのではないか。そして、男の子が男性として成長するには時にはママが眉をひそめる荒っぽいワイルドな要素が必要なのではないか。しかし、高度成長期のモーレツサラリーマンの時代、パパは24時間会社にいたので子育ての現場はママまかせが当たり前だった。そういうパパがたまの休みに子供の相手をしようにも、慣れてないのでママの指示通りの大人しい遊びしかさせてもらえない。結果として当時は母親原理に偏った子育て環境になってしまい、男の子も上品な遊びばかりとなり、それが草食系男子を生みだす遠因となったのではないか。もし「いまどきの若い男子は草食系でだらしない」、と嘆いている肉食系の元モーレツサラリーマンの方は、今からでも遅くないので積極的な「イクジイ」になってはどうか。竹馬でもベーゴマでもいい。数年前『ワイルドだろう~』が流行ったが、人はいくつになってもヤンチャでワイルドなヒーローにあこがれる。そして子供はテレビのヒーローものと同じくらいパパやおじいちゃんの肩車やチャンバラごっこが大好きだ。
(※1)「ダイバーシティ経営:いまだ『女性』が課題の日本企業」(『大和総研調査季報』 2013年新春号(Vol.9)掲載)
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