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世代間問題とドゥメイン投票方式

2013年12月05日

木村 浩一

一橋大学の青木玲子教授は、日本社会の高齢化により少数派となる若者の意見を政治に反映できるように、選挙制度の変更をすべきだと提案されている。青木教授によると、日本の55歳以上の有権者の全有権者に占める割合は、1970年代までは20%台にすぎなかったが、日本社会の高齢化に伴って現在は40%台に上昇し、2050年代には60%台に達するという。若者の投票率が低く、高齢者の投票率が高いという世代毎の投票行動も勘案すれば、若者の意見を政治に反映することはほぼ絶望的であり、選挙制度の見直しをしない限り、日本は政府の借金のツケを構造的に若者に回す社会になっていく。

そこで青木教授は、有権者の年齢構造を考慮した選挙制度に改めるべきであり、アメリカの人口学者ドゥメイン教授が提唱する、母親に子供の数だけ追加投票権を与えるドゥメイン投票方式の実現を呼びかけている。子供が2人いれば、母親は3票の投票権を行使できるという制度である。

一見突拍子もない考えのようにもみえるが、一人一票が金科玉条とはされず、選挙権は歴史的に大きな変遷をたどっており、最初は有産階級に限られていたものが、一定年齢に達した男性全員に認められる普通選挙に変わり、現在は女性にも選挙権が認められている、選挙制度も不変ではなく、社会、経済環境の変化に応じて変わってきており、更に変わっていくべきだ、というのが青木教授の考えである。

ダロン・アセモグル教授、ジェイムズ・A・ロビンソン教授は、「国家はなぜ衰退するのか」(2013年刊、早川書房)の中で、政治制度(民主主義、法治国家、自由財産制など)こそが経済の発展、国家の盛衰を規定すると喝破している。高齢化は財政を悪化させ、人口、働き手の減少は経済規模を縮小させていく。何もしなければ日本経済が縮小均衡に陥っていく中で、日本経済の復活のためには経済政策の見直しだけでなく、両教授が指摘するように政治が経済を規定するのであれば、高齢化社会に対応した政治制度の見直しも不可欠だろう。

我が国の経済制度、なかんずく社会保障制度は、人口増加を前提に作られてきたが、少子高齢化、人口減少によりこのままではその存続は難しくなってきており、人口の年齢構造の変化に対応した制度の抜本的見直しが避けて通れない。経済制度の変革のためには、現在の20歳の選挙年齢の引下げも含め、先送りされる負担を担わされる世代の声が反映される政治制度が必要だ。

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