外国産のコメの価格と品質についてもっと詳しい情報が必要
2013年11月28日
11月15日付けの日本経済新聞朝刊3頁によると、「コメ(精米)を輸入する際に1キロ当たり341円としている関税について、農林水産省が関税率換算で778%としていた見解を『280%』に修正したことがわかった」という。
日本のコメ輸入には778%もの非常に高い関税がかかっていると言われてきたが、財務省の実行関税率表に記載されているコメの関税は、1キロ当たり341円という従量税のみである。これが778%になるのは、関税額を税率に換算するときに使用したコメの国際価格が安かったからに他ならない。逆算すると、341÷778×100≒44円/kgということになる。
関税率が778%から280%に大幅に低下するのは、同記事によれば「政府が昨年、09年の国際相場を調べたところ、1キロ当たり122円が新基準として妥当と判断した」からだという。
ところで、国産のコメ価格は、米屋やスーパーなどに行けば、あるいはネットで調べれば、産地や銘柄ごとに知ることができる。一方、日本人の嗜好に合う外国産のコメの輸入価格についての情報は非常に少ない。参考になるのはミニマム・アクセス米の中で、年間10万トン近く輸入されているSBS輸入米の価格である(SBSはSimultaneous Buy and Sellの略)。これは商社などがアメリカ、中国、オーストラリアなどから国産米に似ているコメを非関税で輸入し、日本の外食産業などに販売しているものである。
SBS米の価格は農林水産省のウェブサイトで「輸入米に係わるSBSの結果」から確認することが出来る(※1)。これによると、例えば今年10月のアメリカ産「うるち精米短粒種」の60キログラム当たりの買取価格は10,347円(172円/kg)、外食産業などへの売渡価格は、同13,425円(224円/kg)であった。問題はこれと比較可能な同等の品質を持つ国産のコメ価格がはっきり分からないことだが、日本人にとって食するに足る外国産のコメ価格は、極端には安くはないということである。
もっとも、中国産などのコメの中には、1キロ当たり数十円程度の非常に安いものがあるので、SBS輸入の価格を比較対象にするのは妥当ではなく、国産のコメは安い外国産のコメに太刀打ちできないという意見もあるようだ。しかし、品質を考慮せずに単に価格だけで国産米と比較をしてもあまり意味はないだろう。
外国産のコメの品質を評価した上でコメの内外価格差を把握することは、TPP交渉や農家への所得補償にも影響を与える重要な問題だけに、さらに詳細な情報が必要なのではないだろうか。
(※1)農林水産省「輸入米に係るSBSの結果概要」
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