建築物の木造回帰
2013年11月19日
今秋、横浜の市街地に国内初となる木造耐火の大型商業施設「サウスウッド」(※1)が完成した。ガラス越しに見える2階から4階の柱と梁は木質感にあふれ、緑地が多く残る街に調和している。大型施設として大量の国産材が使用されているため、国内林業・木材産業の振興につながっている。また、建築に木材を使用すれば二酸化炭素削減効果があるため、地球温暖化対策にも一役買っている(※2)。
防火地域に指定されている市街地で大型の木造建築を可能にしたのは、国内で新しく開発された耐火集成材である。カラマツ(長野県産)の間伐材を使った集成材(荷重支持部)の外側にモルタル(燃え止まり層)を張り付け、その外側を二重(燃え止まり層、燃え代層)にカラマツで覆った構造をしている。1時間耐火の性能を持つため、4階建ての建築が可能となった。これ以外にも木材の耐火性能を高める技術の実用化は進んでいて、防火地域の木造耐火建築物として、オフィスビルでは国内初となる「大阪木材仲買会館」(※3)(大阪市)、飲食店舗では「野菜倶楽部 oto no ha Café」(※4)(東京都文京区)も今春、完成して利用されている。
関連産業の振興や建築物の地球温暖化対策を一層進めるためには、中高層建築物を木造化して、より大きな木材需要を創出する必要がある。十分な性能を持つ木材としては、1990年代半ばから欧州等で生産が急増している「CLT(Cross Laminated Timber)」と呼ばれる重厚なパネルが注目されている。CLTは、小角材の繊維方向を平行にして幅方向に並べたものや、ひき板(丸太をひいた板)を繊維方向を直角に重ねて製造される。任意のサイズが製造可能で、積層数は3~33層、厚さは3~50センチ、幅は1.2~4.8メートル、長さは1.2~30メートルと幅がある。パネル1枚で耐震・耐火・耐荷重等の様々な性能を持ち合わせているため、欧州等では戸建住宅から7~9階建ての集合住宅、大規模商業施設等の床や壁の下地、構造躯体などに使用されている。
日本でも国産スギ等を使用したCLTの開発が始まっている。日本CLT協会(※5)などの製造者から規格化の要望があり、標準規格とすれば利用拡大が見込まれることから、「直交集成板」という名称で、年度内にも日本農林規格(JAS規格)が制定される見込みになっている(※6)。一般的な構造材として普及させるには建築関係の公示を整備する必要があるため、関係団体による実証研究や課題の洗い出しなどが進められている。2013年10月、建築材料として個別に大臣認定を受けたCLT(スギ、高知県産)を用いた建築物件(※7)が着工した。関係者は工法や耐震性などを証明するモデル建築物にして、普及の起爆剤としたい思惑がある。

戦後、我が国では火災に強い建築物を求める動きから、建築基準法(1950年5月公布)などによって木造建築物全般に対して強い規制がかけられてきた。また、森林資源保護の必要性から「木材資源利用合理化方策」(1955年1月、閣議決定)などによって木材消費を政策的に抑制してきた。50余年が経ち、技術革新や森林資源の回復等によって木造建築物を取り巻く状況は大きく変わろうとしている。今年、相次いで登場した木造耐火建築物や木造中高層建築物を可能にする直交集成板は、我が国で長らく続いてきた市街地建築物の非木造化(鉄筋・鉄骨コンクリート造、鉄骨造等)に一石を投じるものとして注目される。
(※2)建物全体で約1,400トンのCO2削減効果がある。総鉄筋コンクリート造の建物と比較した場合、建物供用期間を50年間とした場合に削減できるCO2(部材製造時のCO2削減/木材中へのCO2固定化/部材として伐採された森林に新規植林した木のCO2吸収)の合計を試算(株式会社横浜都市みらい「サウスウッド」ウェブサイトによる)。
(※3)「大阪木材仲買協同組合」ウェブサイト
(※4)「音羽建物株式会社」ウェブサイト
(※5)「日本CLT協会」ウェブサイト
(※6)農林水産省 農林物資規格調査会総会「平成25年9月4日開催調査会」
(※7)高知おおとよ製材社員寮(高知県大豊町)
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