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中国三中全会に注目する

2013年10月24日

金森 俊樹

中国では5年に一回共産党大会が開催され、そこで新しい中央委員会が選出される。昨年11月、第18回党大会が開催され、現在は第18届の期間と呼ばれる。この18届における第三回目の中央委員会全体会議が、略して第18届三中全会と呼ばれる会議で、11月に開催される予定である。したがって、それぞれの‘届’において三中全会があるが、通常、第一回が選出の際、第二回が翌年度の全人代での政府指導部の人事との関連で開かれるため、第三回の会議が、新しい指導層になってからの実質的に最も重要な会議と位置付けられ、主として経済政策面の議論が中心になる。三中全会が注目されるゆえんである。

歴史的に見ると、文化大革命後の1978年12月に開催された11届三中全会が最も有名であり、これを契機に、その後の改革開放路線が敷かれた。特に別途説明がない場合、単に‘三中全会’と言えば、この11届の会議を指すとまで言われている。その他、93年11月に開催された14届三中全会が‘社会主義市場経済’を建設することを正式に承認し、その後の朱鎔基元首相による経済改革の基礎を提供したという点で、重要な位置付けが与えられている。

これまでの三中全会

前指導層(胡錦濤・温家宝)体制の2003-2013年は、その前の江沢民・朱鎔基時代(1989-2003)ほどは大きな制度改革が進まず、都市と農村の均衡ある発展や所得格差の是正等を打ち出したが、むしろ不均衡は拡大した。このため2003-2013年を‘失われた10年’として、経済の均衡回復を打ち出した16届(2003年)は,失敗に終わった(あるいは人々を失望させた)三中全会だとの評価がある(9月30日付証券市場週刊)。これに対し、来るべき三中全会は、11届に匹敵するほどではないにしても、かなり重要な位置付けとなり、少なくとも16届のように、人々を失望させる会議にはならないだろうというのが、大方の見方のように思われる。こうした言わば楽観的な期待、肯定的評価は、たぶんに政権へのリップサービス的な側面もあろうが、その基本的背景として、現指導層がこれまでの経済成長方式が持続可能でなくなってきているという認識を共有し、それを様々な機会で強く主張していること、実際にも、腐敗・汚職への取組み強化、金利や天然ガス等の価格の弾力化、景気減速の中でも大型景気刺激策や大幅金融緩和といった政策を採っていないこと、上海自由貿易試験区の立ち上げと、これに対ししばしば中央の政策に抵抗する多くの地方政府が同様の扱いを希望して本政策を支持していること等、年初来の動きが、現指導層の改革へ取り組む決意を示すものとして、一定程度評価されているということは言えるのではないか。

三中全会で採択される一連の文書は、通常、テーマ毎に設けられたいくつかの起草グループ(関係部門や学者等で構成)によって草案が策定される長く複雑なプロセスを辿る。18届三中全会の準備では、7つの起草グループ(金融、財政、土地政策、価格政策、承認等の行政手続き、社会的公正、戸籍制度)が設けられている模様で、これらが年初から検討を開始、夏の北戴河会議で指導層がドラフトを基に議論し最終案を作成している。三中全会では、基本的には細かい個々の政策より、どういった大きな政策方向が示されるのか、とりわけ、中国経済が労働・資源・環境保全・金融等、様々な面で不均衡に直面し大きな転換点を迎えているとの認識の下、社会経済の‘全面深化改革(全面的な改革)’を進めるという方針が、どの程度明確かつ強いメッセージとして出てくるのかが焦点となる。しかし同時に、そうした大きな政策方向を支える(あるいは、それを政府が本当に実行していく気があるかどうかを探る)観点から、個別具体的にどういった政策が打ち出されるのかも注目すべきだろう。例えば、昨年来、動きはあるものの進捗していない土地管理法改正について、何らかの目途が付けられるのかどうか。本件は、‘新型城鎮化(都市化)’との関連で、三中全会報告の‘牛鼻子(かなめ)’となるか注目されているが、‘着墨(墨を着ける、最も重要な本質に切り込むこと)’は難しいとの見方が多い(9月17日付大公網)。また同じく都市化との関連で戸籍制度改革も注目されているが、党関係者自身、期待値を下げる意味もあろうが、三中全会での‘一刀切(一気に解決する)‘は望めないとしている(中央党校教授、8月28日付北京青年報)。また国有企業改革は、三中全会報告で何か言及するにはあまりに複雑かつ敏感な問題で、大きな動きは期待できないとの指摘もある(9月12日付財経網)。さらに‘影の銀行’等との関連で、貸出金利の自由化や資本取引規制の緩和を含む金融資本市場改革について、明確な道筋が示されるのかも注目すべきだ。

18届三中全会は、そこで示される中国経済の置かれた状況に対する指導層の基本的認識と大きな政策の方向、そして承認される個別の政策の内容、さらにそれがどう実行されていくのかによって、歴史的に11届三中全会に匹敵し得るものにも、16届のように人々を失望させるものにもなり得る。

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