よく知らない隣の国、韓国

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2013年10月01日

  • 秋屋 知則

いささか旧聞に属するが、夏休みに初めて韓国を訪問した。日本との関係はこのところ決して良好とはいえない、というより悪化している。改めて考えてみると海を隔てた隣国なのだが、多くを知らないことに気がついた。もちろん2~3日の滞在でわかるわけでもないし、わかった気になるのもおこがましい。しかし、実際に訪問すれば見えてくるものが何かはあるはずだと思ったのだ。

金浦空港に着く。東京からわずか2時間あまりの旅、全てカード決済にもできないので、ソウル市内で両替をしてもいいが、とりあえずお金を替えてみる。

大雑把にいって額面は日本円で一桁多いような印象だが現在、最高額紙幣は5万ウォンだ。2009年、36年ぶりに登場したこの新紙幣は、現在の朴大統領の就任とは関係がないはずだが最高額紙幣に描かれている肖像が女性であることはなかなか興味深い。人物選考の難しさをはじめ、デザイン、偽造防止の工夫など準備に時間がかかる上、何でも政治と結びつけて考えるべきではないかもしれない。しかし日本でメインに使う最高額紙幣が女性であったならば、女性の活用ではお世辞にも世界の最先端とは言えぬ国として少なからぬメッセージを内外に示すことになるに違いない。

両替した紙幣を並べてみると、不勉強を恥じるようだが誰が描かれているかわからない。また人物名を特定できても、ハングルを創設した世宗大王以外は全くわからない。例えば欧米に目を向けよう。アメリカだとドル紙幣に描かれたG・ワシントン、ジェファーソン、リンカーン、フランクリンといった人々は日本人にもおなじみだろう。英国ではエリザベス女王(二世)の存在感が圧倒的だがそれでもアダム・スミス、ダーウィンと聞かれたら、とりあえずどんな偉人か答えられるだろう。しかし、韓国の偉人についてはそれほど知らない。

さてお金が入手できたら、使ってみたくなる。実はソウル市内では街のあちこちにコンビニエンスストア(コンビニ)があふれていて旅行者にとって便利なことこの上ない。バーコードを読み取るレジではまず会話を要しないし、およそ陳列棚には金額も明示されている。外国語を話さずともカウンターに欲しい商品を置けば、レジ画面の数字にしたがって支払うだけだ。海外旅行の楽しみでもある買い物での値切り、価格交渉は日本でもコンビニではやらない。しかもセブン‐イレブンなど日本のコンビニが日本とほぼ同じ店舗仕様で至る所に高いシェアで進出しているので、わずらわしくない一方で見知らぬ国を訪ねた旅行らしさは希薄になる。

では何もかも同じかというと違いもある。筆者がペットボトル飲料やスナック菓子やらをまとめて購入しようとレジに置いて精算を済ますとそれっきりである。両手で持ちきれないほどの商品に対してレジ袋を出してくれないのである。気がきかないだけかと思って袋を要求してみると“20ウォン(2円弱)”だと言われた。日本でも有料にしているスーパーマーケットはあるが、コンビニでは言われた経験がない。衝動的な買い物も多いのでコンビニへのマイバッグ持参にはいささか違和感はあるが、ごみの削減などの理由で国策として取り組んでいることを後で知った。

その後、宮殿跡など歴史的な建造物も訪ねた。似ているようでもやはり違いが多い。お互いの言い分もあるが国の間のささくれだった関係には優劣の意識が見え隠れする。しかし、もう少しお互いについて見聞きすることで学ぶことは少なくないと思う。海外に行くことは、自らが持つ限られた情報を補完するには重要な手段だと改めて感じた。

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