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東京で五輪?でもDoublethePayback(倍返しだ!)は避けたい

2013年09月25日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

東京での夏季五輪開催が決定し、日本では東京に住んでいた自分としては嬉しい限りである。

開催決定の瞬間は、たまたま休暇中、家族と一緒にBBCニュースをテレビで見ていた。ここでびっくりしたのが、報道するBBCニュースでの東京の情報量の少なさだ。直前の中継はイスタンブール、マドリードばかりで、IOCのロゲ会長が、最後の開催国決定の紙を開くまでほとんど東京の情報が流れてこない。決定した瞬間もオリンピック歴史研究家(そんな人がいたのだと思ったが、個人的にはこういう研究者は大好きだ)が1940年にも東京で五輪開催が決定していたが戦争の影響で中止になっていたなどの昔話をさらっと話したかと思うと、マドリードとイスタンブールは、次回開催に向けて頑張るだろうといった話に多くの放送時間を費やしていた。欧州とその近郊の2大都市の残念な結果であったこともさることながら、東京への関心がいまひとつ薄い。欧州だからということもあるが、単純に東京の話をまともにできる専門家が少ないこともその要因のひとつであるといえる(東京への質問が福島原発事故による汚染水に集中したのも、ある意味単純で他に質問がないからとの見方もできる)。

欧州での、東京はもとより日本に対する知識のなさはロンドンに住んでみて痛感させられる。特に東日本大震災に関する状況や福島の汚染水漏れの話など知らないがゆえに過度に反応することも多い。英国でも、震災時には連日BBCニュースで福島の原発の話を中継していたが、1週間ぐらいで「アラブの春」に取って代わられてしまい、その後ほとんど放送がなかったそうだ(日本では逆を考えると分かりやすい)。当然ながら欧州の人達が、日本がどこにあるかあまり見当がついていない。以前、妻のモスクワの親戚がインドネシアのバリ島に来た際に、日本の近くにいるからどこかで合流しないかなんていう電話がかかってきたほどだ(同じアジアの近くにあると思ったらしい)。しかしこれは日本人にも同じことがいえるだろう。旧ソ連のチェルノブイリ原発がウクライナにあってモスクワから800km離れていることを知らない日本人は多い。しかも被害の大半が隣国のベラルーシであったことなどなおさらであろう。これは逆にロシア人からすれば、“そんなことも知らないの?”といわれる事実のひとつである(そもそもベラルーシがどこにあるか知っている日本人は少ないと思うが)。

五輪開催の賛否はさまざまであるが、開催地決定後も意外にも株式市場は冷静な印象であったようにも思える。もともと先進国での夏季五輪開催は株式市場に与える効果は短期かつ限定的であるとの意見が多かったことも影響しているのであろう。たとえば、同じ先進国で複数回開催都市のロンドンでは、開催地決定日の2005年7月6日以降の3ヵ月で主要株価指数(FTSE100)は+2.7%上昇したものの、7年後の2012年7月26日の五輪開催日直前まででは+6.6%の上昇に留まっており年換算にすると+1%を下回っていることがわかる(ちなみに北京オリンピック開催地決定後の、中国の上海総合指数は2001年7月13日の開催地決定日から開催日直前の2008年8月7日まで+26.2%上昇している)。一方で、五輪開催決定以降、上昇する可能性が高い資産として不動産が挙げられる。2013年9月に発表された、ロンドンの不動産サービス会社、サヴィルズが世界の10都市の不動産投資リターンを比較した調査によると、東京の賃貸住宅の総リターン(ここでは10年国債利回りとのスプレッド)は、2位ニューヨーク、3位パリをしのいで1位に輝いている(現在、価格上昇が顕著なロンドンは4位)。ロンドンの不動産価格も、五輪開催決定の2005年から7年間で25.0%上昇(※Nationwide House price indexによる)を記録していることから、同じ程度の上昇を記録してもおかしくはないであろう。

ただし、かつてのように不動産バブルのような浮かれムードになり、90年代の不良債権問題の二の舞だけは避けたいのが本音であろう。日本ではDouble the Payback(倍返しだ!)なる決めゼリフで上司に立ち向かう、バブル期入行組のバンカーを描いたドラマが巷を騒がせているとのこと。1,000億円を超える引当金積み増しの攻防や、事業会社の粉飾決算を描いているなど、結構マニアックなドラマと思いきや爆発的な視聴率だったとのことだ(結局一度も見ることはできなかったが、銀行オタクとしては非常に気になる内容であった)。同時にこの番組の流行で、銀行行動が企業経営や世の中に及ぼす影響を再認識した人も多いのではないか。低金利の住宅ローンが組める現在の日本で、五輪開催を契機に、バブルの再来にならないように、銀行には慎重な融資姿勢を期待したいところだ。

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菅野 泰夫

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