政権を律するもの

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2013年08月01日

  • 木村 浩一

現代の民主主義国家においては、国民の政権支持率が政治を規律する重要ファクターであるが、最近は株価もその1つとなっている。

特に、我が国の場合、株価は海外投資家主導で形成され、政権の経済政策に対する国際的評価を端的に示すシグナルとなっている。小泉政権時の郵政総選挙以降の株価上昇や昨年末の衆議院解散以降の株価上昇は、主に構造改革を評価する海外投資家の買いにより実現した。株式相場の上昇は、消費拡大や企業の投資に影響力が大きいだけに、経済成長には不可欠な要因であり、政権としては無視しえないものとなっている。

国際経済、国際政治における我が国の位置づけが、久方ぶりに復活しつつある。ヨーロッパではバブル崩壊後の日本のように経済の低迷が長期化すると見込まれ、中国をはじめBRICS、新興国の経済ブームは終わりつつあり、短期投資の観点から、アメリカと日本が世界経済の牽引車として期待されている。一方、日本は世界最速のスピードで高齢化社会に突入しているが、東アジア、ヨーロッパ諸国も高齢化が進んでおり、成功するにしろ失敗するにしろ日本の対応を固唾をのんで見守っており、中長期的な投資の観点から、日本経済にサステナビリティーがあるかどうかが注目されている。

明治維新を除き自律的な改革が困難な日本において、国際的な評価(=株価)は改革のドライビング・フォースである。国会のねじれが解消し、政策決定、実行が容易となると予想されるこれからの3年間は、岐路に立つ我が国において決定的に重要である。第1の日本経済の復活には、TPPを始めとする貿易の自由化、構造改革、財政再建が、第2の高齢化社会への対応には、社会保障制度の抜本的改革、少子化対策、労働力の拡大(高齢者の雇用延長、女性の社会進出)、などが乗り越えなければならない課題である。

以上すべてにわたって安倍政権は結果を出していかなければならないが、いずれも歴代の内閣が解決を先送りしてきた難問で、タフな政治決断が求められる。痛みを伴う改革に対する抵抗は強いだろうが、改革を断行していく限り、株式市場は政権を評価するだろう。

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