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消えた"えびフライ"

2013年07月04日

調査本部 参事 秋屋 知則

世の中には様々な統計がある。本来、そのために作られたのではないだろうがそんなことを調べているのだと感心することも少なくない。

例えば日本全国の消費動向を調べる上で同じ品目を一定の期間、調べ続けると思わぬ地域や都道府県の特徴を発見することになる。筆者は愛知県出身で社会人になってからも名古屋で多くの時間を過ごしたので、全国ベースの統計と同様に地域のデータも気になってしまう。

本来、日本で最も○○を食べている市や県といったランキングは「家計調査(総務省)」などの統計の副産物のはずだが、宇都宮市と浜松市の餃子の例のように、なかなか熱い競争になっているものもある。様々な品目のデータをご当地の気候風土や文化などと結びつけて興味深く眺めているが、町おこしのキャッチフレーズとして“日本一”とか、“ギネス世界記録登録”といった勲章がかかるとなると当事者はさぞや大変なことだろう。

さて、我が故郷でよく食べられているものに何があるかと考えると、まず赤みそ、八丁みそと呼ばれる大豆を発酵・熟成させた豆みそがあげられる。みそは地方によって種類が豊富で異なるが、全国的な生産量(農林水産省「米麦加工食品生産動向」平成21年)では、大豆と米を発酵・熟成させた米みそが約8割と主流である。

前述の家計調査(二人以上の世帯、平成22~24年平均)によれば、みそについての1世帯あたりの年間購入数量は盛岡市が9,323gと都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング1位で、次いで長野市9,203gと東北地方やみその名産地が上位を占める。名古屋市は5,927gと全国6,219gを下回っている。支出金額でも全国平均以下で、思ったほどみそ好きではないようだ。

次にみそでなければ、巷間言われているえびフライではないかと考えた。ただ、えびの消費量は比較できても、そのうちフライの材料としてどれだけ使われているかはわからない。さらには、別の品目分類である調理済み総菜のえびフライや冷凍食品として購入されるえびフライがどのくらいあるかなどの切り出しが難しい。えびの種類はともかく魚介類のえびとしては和歌山市が最も多く消費している一方、名古屋市は上位ではあるがこれもイメージほど多くはない。

(ちなみに名古屋市のデータで突出しているのは喫茶代である。全国平均が5,093円、東京都区部が8,203円であるのに対して名古屋市は1世帯12,367円と最も使っている。)

えびフライについては、「小売物価統計調査(総務省)」という統計もある。この調査は、全国の主要都市で川下の小売価格を継続調査しているもので、えびそのものだけではなく、1人前のえびフライ定食がいくらなのかがわかる。

2011年のデータで見ると名古屋市は1,076円で東京都区部が1,460円であった。外食となるので都会ほど高いのかと思うと、日本各地でばらばらである。大阪市では1,092円、隣接する京都市では1,401円である。また、同じ都市でハンバーグ定食と比較すると、えびフライ定食の方が総じて単価が高いことに加え、調査対象中、最も高い福井市(1,750円)と最も安い大分市(893円)では倍近い開きがあるなど価格のばらつきが大きいことがわかる。(小売物価統計調査では全国共通でない銘柄が調査されることがあり、「都市別価格は、そのまま地域格差を示すものではないので注意が必要(同統計表利用上の注意より)」とされるものの、品質・規格・容量などの近いものが調査されている)。

ところで、総務省は長らく「えびフライ定食」の価格を調べてきたが、消費支出の変化等に対応するため、2012年に「えびフライ」から一般的な「フライ」を調査対象とする品目名改正を行い、基本銘柄を「豚カツ(ロース)定食」に変更した。より代表性がある品目にするという意図があるようだが、それだけ外食における「えびフライ(定食)」の指標性が薄くなったということだろう。

こうした地域別の消費量や値段の多様さ、調査対象品目の変更の様子を見ると、日本全体の消費や物価の動向を見ることの難しさを感じる。そう思うと数字の羅列のように見える統計もなかなか奥が深い。

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