ライトダウンの夜にあらためて電力問題を考える

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2013年06月24日

  • 中野 充弘

6月21日に「夏至ライトダウン」が実施され、東京タワーや横浜ベイブリッジなどが夜の8時から10時までの2時間、一斉消灯(一部に部分消灯もあり)された。このライトダウンの歴史は意外と古く、環境省が2003年より地球温暖化防止のためライトアップ施設の消灯を呼び掛ける「CO2削減/ライトダウンキャンペーン」を毎年夏至の日を中心として行ってきた(※1)。2008年からは、G8サミットが7月7日に洞爺湖で開催された(当時は福田康夫首相)ことで、夏至ライトダウンに加え、7月7日七夕の日にライトダウンを呼びかける「クールアース・デー(七夕ライトダウン)」の呼びかけが加わった。今年も7月7日に次回のクールアース・デーが実施される。

これらの取組の目的は、「ライトアップに馴れた日常生活の中、電気を消すことでいかに照明を使用しているかを実感し、地球温暖化問題について考えていただくこと」(環境省)とされている。昨年のクールアース・デーの参加施設数は1.7万施設、削減電力消費量は92万kWhであった(※2)。最近参加施設数がピークと比べて落ち込んでいる点が気になるが、その理由としては、2011年の東日本大震災以降、省エネ機運が定着してきており、改めてキャンペーンに参加するという動機が薄らいできたためと思われる。例えばコンビニなどではすでに積極的に照明のLED化をすすめるなどで省エネ実績を上げている。

コンビニ各社のCSR報告書等によれば、1店舗当たりの年間電力消費量は16~17万kWhであり、消費内訳では約6割が冷蔵庫、空調15%、照明10%と続く。先ほどの照明LED化以外にも、スマートセンサーを付けて電力使用量の見える化を実施、太陽光発電パネルの設置、蓄電池の設置など様々な省エネの取り組みを行っている。

24時間営業が多いコンビニは夜間でも明るい店内が目立つため「電力過剰消費ではないか」と一部で批判されることもあったが、「ライフラインとして、いざというときに頼りになる」「地域の安全に役立つ」「買い物に不便な高齢者などの味方」などの声もあり、今後も省エネに積極的に取り組む姿勢を示すことで消費者の信頼を増すことが期待される。

一方、政府が注力している電力システム改革では、(1)安定供給の確保、(2)電気料金の最大限の抑制、(3)需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大、の三点が掲げられている。この目的の下で①広域系統運用の拡大、②小売及び発電の全面自由化、③送配電部門の中立性確保が2020年目途に順次進展する。電気事業法の一部改正案(第一段階)が今通常国会で成立する見通しとなったが、企業の自家発電設備の有効活用、新電力のビジネス拡大、HEMS・CEMS(※3)などエネルギーマネージメントシステムの進化、など各分野での新しい動きが活発化してくるに違いない。新しいビジネスチャンスを求めて予想もしなかった展開が待ち受けている可能性は高い。

(参照)ライトダウン2013


(※1)クールビズは2005年からスタートしたが、すでに社会的にも定着していることと比べれば、ライトダウンの認知度はまだ遅れているように思われる。
(※2)ただし、これらの数字は参加者から入力されたデータに基づいており、数字自体に過剰反応すべきではない。ちなみに過去の参加施設数ピークは2009年七夕の8.6万施設、削減電力消費量ピークは2007年の293万kWhであった。
(※3)ヘムス(Home Energy Management System)家庭内のエネルギー管理システム
セムス(Cluster/Community Energy Management System)地域内のエネルギー管理システム

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