持株会社体制を考える
2013年03月27日
持株会社体制が名実ともに解禁となって十数年が経過した。2000年代半ばの一時のブームとも言える時期の勢いはないものの、現在、持株会社体制を採用している上場会社数は300社を超え、400社に迫っている。持株会社体制が新しいグループ経営の手法として定着してきた証であろう。とはいえ全ての企業で持株会社体制がベストな経営スタイルというわけではない。その会社の事業内容、企業風土、業界環境など、さまざまな条件により最適なグループ経営体制は異なってくるものと考えられる。
グループ経営体制としては、わが国を含め世界的にも、コア事業を営む親会社を中心とする親子関係(いわゆる一種の事業持株会社体制)が圧倒的に多い。世にいう持株会社体制では、親会社である持株会社は事業を営まず(グループのコア事業とは関わらない不動産事業や新規事業の育成などを営むケースはある)、専らグループ全体の経営戦略の策定や事業子会社の指導・管理を行っており、事業子会社からの配当収入が主な収益源である。

では、何を達成するために持株会社体制に移行するのであろうか。
一般に持株会社体制を採用する主な目的としては、
- グループ全体としての戦略立案・意思決定が可能となる。
- 持株会社、各事業子会社とも役割が明確化し、事業責任が徹底される。
- グループ全体における経営資源の最適配分が可能となる。
- 事業の買収や売却、再編などM&Aが容易になる。
などがあげられることが多い。いずれも持株会社体制のメリットを活かすものであるといえる。
反面、持株会社体制はメリットばかりではなく、デメリットもある。分社することによるグループ一体感の欠如や、グループ会社の増加による間接部門コストの増加などである。
持株会社体制は経営戦略のためのひとつのツールであり、持続的な成長を期すための新しいグループ運営体制のひとつの選択肢であるといえる。持株会社体制がベストの運営体制になるとは限らないが、①多様な事業を営んでいる場合、②海外事業の比重が高くなってきた場合、③M&Aによる業容拡大を目指している場合などは、一度は検討することも必要であろう。自社の事業特性や経営環境、業界動向などから、持株会社体制のメリット・デメリットを見定めながら、適切な経営形態を選択することが大事である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
「九州・沖縄」「北海道」など5地域で悪化~円高などの影響で消費の勢いが弱まる
2025年7月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年07月14日
-
2025年5月機械受注
民需(船電除く)は小幅に減少したが、コンセンサスに近い結果
2025年07月14日
-
不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(TISFD)の構想と日本企業への示唆
影響、依存、リスクと機会(IDROs)をいかに捉え、対処するか
2025年07月14日
-
トランプ減税2.0、“OBBBA”が成立
財政リスクの高まりによる、金融環境・景気への悪影響に要注意
2025年07月11日
-
中央値で見ても、やはり若者が貧しくなってはいない
~20代男女の実質可処分所得の推移・中央値版
2025年07月14日