大学による受験生の選抜
2013年03月19日
今年の大学受験シーズンも終盤を迎えている。国公立大学入試では、前期日程で実施された試験の合格者発表が終わり、後期日程試験が行われた大学では、合格者がこれから順次発表されるところであろう。独立行政法人大学入試センターによれば(※1)、平成25年度の大学入試センター試験(センター試験)では、志願者数は573,344人となっており、前年度と比較して17,807人(+3.2%)増加したという。高等学校等新規卒業者に占める志願者数の比率(現役志願率)も、過去最高の42.1%になったとされている。

(出所)独立行政法人大学入試センター・文部科学省資料より大和総研作成
センター試験は、昭和54年度に国公立大学の大学共通第1次学力試験(共通一次試験)としてスタートし、平成2年度から、国公私立大学が自由に利用できるセンター試験に改められている。平成25年度のセンター試験には、私立大学520校、私立短期大学142校を含め、過去最高の840校(参加大学等)が参加しているという。しかし、参加大学等の平成25年度の募集人員数(予定)は、18万6千人余りにとどまっており、前年度から約2千人減少している。この数字から計算すると、志願者のうち約38万7千人は、参加大学等に入学できないことになる。
センター試験は、志願者の高等学校段階における基礎的な学習の達成度を判定することを主な目的としている。しかし、現実の入学合否は、二次試験の結果などと合わせて、他の受験生との比較で決められることが多い。学習の達成度が一定水準に達していても、希望する大学に合格できない場合、受験生は学習の範囲や深度を増して対応せざるを得ないであろう。高等学校における学習に加え、学習塾や家庭教師、通信添削などを通じた学習が必要になるとすれば、大学受験のために多くの時間と資金を費やすことになる。
センター試験の志願者には、国公立大学への入学を希望する者も多いとみられるが、平成24年度の大学入学者の状況をみると(※2)、志願者数555,537人に対して、国公立大学の入学者数は131,198人(23.6%)にとどまっている。多くの志願者の希望がかなえられていない現在の受験制度は、最良の仕組みとは言い難いであろう。また、センター試験志願者のうち、高等学校等卒業者(浪人)の比率は18.8%となっており、三浪以上も20,364人が志願している。現在の制度は、教育上の大きなロスを引き起こしている可能性もある。
人口が増加している過程では、受験生に競争を求め、大学が受験生を選抜する仕組みは有効だったのかもしれない。しかし、少子化が進み人口減少に転じた今日では、限られた人材を効果的に育成することが求められよう。日本の将来に向けて、グローバル人材や高度人材の育成を求める声も多いが、高い山をつくるためには、広い裾野が必要になる。多くの若者が、知識や教養を高め、感性を磨き、経験を積める環境をつくることが重要であろう。新しい時代を切り開くためには、新しい価値観や発想が必要ではないだろうか。
(※1)「平成25年度大学入試センター試験の志願者数(確定)について」(2012年11月30日)独立行政法人大学入試センター
(※2)「学校基本調査-平成24年度(確定値)結果の概要-」文部科学省
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