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注目される2つの非課税措置(日本版ISAと教育資金の贈与非課税)

2013年02月27日

金融調査部 制度調査担当部長 吉井 一洋

平成25(2013)年度税制改正大綱では、2つの非課税措置に関する手当を行う旨が、盛り込まれている。一つは、既に導入が決定されていた、いわゆる日本版ISA(少額投資非課税制度)の拡充策、もう一つは、祖父母から孫への教育資金贈与の非課税措置である。2013年2月22日に、自由民主党、公明党及び民主党の間で、税制改正法案の年度内の成立を目指すことが合意され、3月31日までに税制改正法が可決・成立するであろうことが、ほぼ明確になった。


日本版ISAは、上場株式・公募株式投資信託等(上場株式等)を対象とする非課税投資制度で、2014年1月1日から実施される。口座開設の手続きは、遅くとも今年(2013年)の10月から開始する。日本版ISAの導入が決定された2010年度税制改正では、上場株式等の税率が10%から20%に引き上げられることへの激変緩和措置として導入が決定されたため、口座が設定できる期間も、今の制度では3年間と短期間となっている。これが平成25(2013)年度の税制改正大綱では、口座が設定できる期間を3年から10年に延長することとされた(その代わりに非課税運用期間は10年から5年に短縮される)。制度の導入後に投資を促進する効果が表れれば、恒久化されることも想定されている。即ち、この制度は、時限的な激変緩和措置から、個人が証券投資を行う上での重要なアイテムへと位置づけが変わろうとしている。

日本版ISAは、非課税枠は運用益ではなく、年間の投資元本で管理されるため、その投資元本から運用益がいくら出ても非課税だが、逆に、口座終了時や引出時の時点に損が出ていたとしても、その損はなかったものとみなされ、他の株式や株式投資信託と通算はできない。また、年間の拠出限度額は100万円であり、いわゆる富裕層や、退職金のようなまとまった資金の運用などは、主なターゲットにはならない。資産形成の途上にある中堅・若年層などを投資者層と想定しているものと思われる。これらの投資家層を想定した場合、損失の損益通算ができないことを考えると、運用手段は株式投資信託の中でも相対的にリスクが低いものが中心となると思われる。期待運用利回りも低くなるため、その分、手数料や信託報酬等のコストの低い商品が好まれるのではないかと推察される。

日本版ISAでは、一旦投資すれば非課税枠を消費したことになり、その後一部売却したとしても、消費した枠を再利用することはできない。100万円投資して、30万円売却した場合でも、新たに30万円の非課税枠が生じるわけではない。他方で、金融庁が主催する金融審議会の「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」が2012年の12月に公表した報告書では、販売会社が手数料獲得のため、証券投資信託を顧客に回転売買させているとの指摘がなされている。日本版ISAでは、このような批判に配慮し、頻繁な投資対象の入れ替えやスイッチングを抑制し、じっくりと腰を据えた中長期の投資を促すことを念頭に置いているものと推察される。さらに、分配金を再投資した場合は、再投資の分だけ非課税枠を消費することになる。これらの点を考慮に入れると、日本版ISAの対象商品としては、長期の安定的な運用を目指したバランス型ファンドの品揃えの拡充や、運用益を分配せず無分配で5年間運用するタイプの商品などの新たな商品の開発が期待される。

なお、日本版ISAの年間の投資上限(100万円)、分配金のうち特別分配金(元本返済額)は日本版ISAでなくてももともと非課税であることなどを考えると、退職金を運用しながら取り崩していくことを想定した毎月分配型は、日本版ISAには向かないものと思われる。


もう一つの、祖父母から孫への教育資金贈与の非課税措置とは、直系尊属、即ち祖父母(あるいは父母)が、孫(あるいは子)の教育資金に充てるために金銭等を拠出し、金融機関に信託等をした場合に、贈与を受ける者1人につき1,500万円までの金額について贈与税を課さない制度である。金融機関には信託銀行のみならず、証券会社、銀行も含まれる。贈与を受ける者は、特例の適用を受けようとする旨等を記載した教育資金非課税申告書を、金融機関を経由し、受贈者の納税地の税務署に提出する。信託等から払い出した金銭を教育資金の支払いに充当した場合にはそれを証する書類を金融機関に提出する。孫の30歳到達時に、拠出額から教育資金として払い出した額を差し引いた残額があれば、贈与があったものとして贈与税が課税される。拠出できる期間は、2013年4月1日から2015年12月31日までである。

この制度は、毎年100万円といった小口の金額ではなく、1,500万円といったまとまった金額が入金できるため、証券会社や銀行の富裕層ビジネスの顧客層には親和性が高いとの指摘もある。

受け入れた資金を運用することは禁じられておらず、有価証券や預金を用いた運用は可能であると思われる。これらの運用損益は、その金融商品の通常の所得として取り扱われ、運用益には所得税・個人住民税が課されることになる。贈与税の非課税枠は、拠出額がベースとなるため、運用益部分に対して贈与税は課されないものと思われる。また、日本版ISAのような回転売買に関する制約はない。

しかし、運用損が出た場合、運用損部分については、教育資金に充当したことを証明する書類は出せないため、贈与を受けた額のうち教育費として使用しなかった部分とみなされるものと思われる。その結果、運用損部分に対して贈与税が課されることになるものと考えられる。即ち、元本は毀損する上に、贈与税も課されるという、厳しい状況になる。

運用損が出た場合の受贈者のダブルでのダメージを考えれば、当該資金の運用に際しては、リスクの高い商品での運用は慎重に考えざるを得ず、リスクが小さい資産での長期の安定的な運用が中心になるのではなかろうか。

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金融調査部
制度調査担当部長 吉井 一洋