科学技術分野における女性研究者の動向

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2013年02月26日

  • 伊藤 正晴

経済社会の活性化を図るために多様な人材を活用することや、少子高齢化による労働力人口の減少懸念に向けて労働供給の量的拡大を図ることなどから、産官学のさまざまな分野で女性の活躍推進が進められている。科学技術の分野でも、多様な視点や発想を取り入れて研究活動を活性化し、新たな価値を創造するために、女性研究者の一層の登用や活躍が期待されている。そこで、「平成24年科学技術研究調査(※1)」から、女性研究者の動向を検討してみた。

調査の対象となっている企業、非営利団体、公的機関、大学等における研究者は、直近の平成24年で前年比 -0.2%の89万3,000人、そのうち女性研究者は前年比+1.2%の12万4,700人となっている。また、平成15年からの推移をみると、研究者全体の数は平成20年以降ほぼ横ばいであるのに対し、女性研究者は増加が続いており、研究者全体における女性比率は平成15年の11.2%から平成24年には14.0%まで連続して上昇している。一方、研究主体によって女性研究者の状況には差がある。研究者数全体では企業部門が60%、大学等の部門が35%を占めているのに対し、女性研究者数では企業部門が33%、大学等の部門が62%となっており、女性比率はそれぞれ7.6%と24.7%で大きな差が生じている。

次に、自然科学の5分野(理学、工学、農学、医学・歯学、薬学)と人文・社会科学の計6つの分野について平成24年における研究者の数をみたところ、最も研究者数が多いのは工学で、男性が42万2,100人、女性が2万2,400人となっている。女性比率は5.0%で、6つの分野で最も低い。これは、工学の研究者の8割強を占める企業部門での女性比率が4.5%と非常に低いことの影響が大きいが、大学等の部門でも女性比率は9.2%であり、工学の分野は全体的に女性研究者が少ない。次いで研究者が多いのは理学であるが、女性比率は12.6%となっている。ただし、理学のなかでも生物の女性比率は25.1%となっているなど、専門により女性比率の水準に大きな差がある。自然科学で女性比率が高いのは、医学・歯学の25.1%、薬学の26.4%であり、人文・社会科学も28.0%と理学や工学などよりも女性比率が高い。

平成15年6月に男女共同参画推進本部が決定した「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標の達成に向けて、さまざまな分野で男女共同参画への取り組みが進められている。科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定される科学技術基本計画(※2)においても、平成23年度から5年間を対象とする第4期基本計画で、国は自然科学系全体での女性研究者の採用割合を25%とする数値目標を早期に達成するとともに、更に30%まで高めることを目指すとしている。また、特に理学系20%、工学系15%、農学系30%の早期達成及び医学・歯学・薬学系合わせて30%の達成を目指すことも記されている。日本の女性研究者の状況は分野によって異なっているが、いずれの分野でも女性比率の水準は高いとはいえまい。女性研究者の活躍を促進するため、出産・子育て等と研究の両立のための環境整備、女子学生の理工系分野の進路選択の支援などを図ることで、科学技術分野における女性の参画が拡大することを期待したい。

分野別の男女別研究者数と女性比率(平成24年)
分野別の男女別研究者数と女性比率(平成24年)
(出所)総務省「平成24年科学技術研究調査」より大和総研作成

[参考レポート]
科学技術分野における男女共同参画の動向 -平成24年科学技術研究調査から-」(2013年2月8日付ESGニュース)

(※1)総務省「平成24年科学技術研究調査
(※2)文部科学省「第4期科学技術基本計画

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