1. トップ
  2. レポート・コラム
  3. コラム
  4. 消費税率アップで見落としがちな対策

消費税率アップで見落としがちな対策

2013年01月22日

経営コンサルティング部 主任コンサルタント 大川 穣

2011年7月に実施された地デジ化移行後の反動によって、その後に家電メーカーや家電量販店が打撃を受けたことは記憶に新しい。2014年4月に予定されている消費税率8%への引き上げを控え、耐久消費財を中心に消費税増税前に駆け込み需要が発生することが予想される。需要が一巡したあとにはその反動減が起こる可能性も高い。このように企業にとっては消費税増税を目前に特需が見込まれる半面、その後の反動減が在庫リスクとして顕在化するなど、経営を厳しいものにすることが考えられる。

今回予定されている消費税率アップは企業に需要の変化をもたらすだけでない。消費税の納付手続にかかる固有の論点が企業の資金繰りの課題となることを確認しておきたい。

間接税である消費税は、モノの流通段階で二重に消費税が課されないよう、事業者が売上(※1)に対して「預かった消費税」から仕入れ(※1)に際して「支払った消費税」を控除した金額を消費税として納付する仕組みだ。納付する消費税は預り金的性格を有しており、事業者は消費税の実質負担者である最終消費者に代わり国に納付する。しかし、資金繰りに苦慮する企業の中には、いったん預かったはずの消費税を一時的に運転資金に回してしまうケースも多いといわれる。その原因は、納税手続面の課題だけでなく、消費税の課税の仕組み自体に複雑な面があることから、納税額の把握が不十分な点にもある。

消費税は税率8%を経て、2015年10月には10%まで引き上げられることが予定されているため、税率5%の現状と比べると、この預かり分の消費税が段階的に膨らむことになる。
一般に消費税は、事業年度中はBS項目として認識され、損益への影響はない。したがって、自社でどの程度の消費税が発生しているかは、消費税法における取り扱いを確認しないと把握できない。例えば、非課税取引を行っている場合には、支払った消費税の全額を控除することができないルール(※2)となっている。主に、非課税取引に該当する金融取引や土地もしくは有価証券の譲渡等(自社が売上側)を予定している場合は、納税負担が増す可能性がある。また、同取引を予定している期に多額の設備投資も予定している場合には、支払った消費税について控除できる額は少なく計算される可能性もある。
消費税率アップによる影響が自社の取引にどのような影響を与えるのか、財務面での検討は欠かせない。なお、消費税は単体課税であるので、グループ間取引に関しても同様の取り扱いだ。

国税庁が発表している平成23年度租税滞納状況によれば、全税目の新規発生滞納額が6,073億円であり、そのうち消費税の新規発生滞納額は3,220億円となっている。年間で発生する諸税の滞納額の50%超を消費税が占めている。
所得課税である法人税などとは異なり、赤字でも納税額が発生する消費税に注意が必要だ。

企業にとって、消費税にかかる納税資金をこれまで以上に分別管理し、運転資金に回すようなことを避ける必要がある一方、納税の仕組みが企業の実務負担とならないよう整備されることを望む。

(※1)会計上、売上または仕入れとして認識されるものではなく、消費税の課税対象となる売上または仕入れをさす。具体的には、資産の譲渡、貸付並びにサービスなどのあらゆる取引がこれに該当する。
(※2)課税売上割合が95%未満である場合、または課税売上割合が95%以上であっても課税売上高が5億円を超える場合には、支払った消費税額の全額を控除することはできない。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

大川 穣

執筆者紹介
経営コンサルティング部
主任コンサルタント 大川 穣