今年のサンタは控えめか

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2012年11月21日

  • 笠原 滝平

アメリカで年末商戦の季節が近づいてきた。
例年、11月、12月は消費が盛り上がることで知られている。アメリカではクリスマスなどにプレゼントを渡す習慣があり、それに合わせた小売店などの大規模なセールが行われる。特に有名なのが、サンクスギビングデー(2012年は11月22日)の翌日の金曜日で、一説には小売店が黒字になると言われていることからブラックフライデーと呼ばれている。デパートから家電量販店まであらゆる店がセールを行い、店によっては深夜からオープンするところもある力の入れようである。私自身、2011年の年末商戦は赴任直後で、時差ぼけが治らない中、有名デパートや家電量販店を訪れた。どの店も陳列されている商品が見えないほど人で混雑していたのが非常に印象深い。さらに、近年ではオンライン販売が伸びており、サンクスギビングデー明けの月曜日はサイバーマンデー(オンラインの販売会社がセールを行う)と呼ばれている。その後、年末までセールが続く。まさに一年の消費を決めると言っても過言ではない時期である。実際、小売売上のデータを月別に確認すると、12月の売上が突出して多い。特に、プレゼントへの支出が多いため、スポーツ・趣味用品店の12月の売上が一年の14%程度にのぼるなど娯楽性の高い分野で消費の増加が顕著である。


米国小売協会の調査によると、2012年の一人当たりの予算額は749.51ドルとなった。2011年の消費額は740.57ドルだったため、予算どおりなら前年比1.2%の伸びとなる。2010年が5.4%、2011年が3.0%だったことを考えると、2012年の消費は控えめな印象となる。さらに、消費者物価指数は直近では前年比2%程度の伸びとなっている。つまり、物価の上昇分を除くと一人当たりの消費額は前年から少なくなっている可能性がある。 足下で消費者マインドは改善傾向にあるものの、雇用の改善ペースが依然として鈍いことや、いわゆる「財政の崖」問題など先行きに対する不安が残存する。「財政の崖」のうち、減税措置が終了し、一部の世帯に実質的な増税が見込まれる項目がある。ただし、実際に減税措置が終了するのか、どの世帯が影響を受けるかなどが確かになっていない。そのため、来年以降の自分の使えるお金がわからない状況なのである。そうした中、消費者としては年に一度の大イベントとは言え大盤振る舞いとはいかないのではないだろうか。今年のサンタは少し控えめなのかもしれない。


年末商戦の特徴

(注1)データは2007年から2011年の平均値。
(注2)各項目ごとの年間売上に占める月別のシェアを示したもの。
(注3)総合小売にはデパートやディスカウントストアが含まれる。
(注4)非店舗小売はオンラインショッピングや通販が含まれる。
(出所)Census, Haver Analyticsより大和総研作成

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