快適な眠りがもたらす企業の発展

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2012年09月25日

  • 藤原 朋之
今年の夏は例年以上に寝苦しい夜が続き、寝不足に悩まされた方も多いのではないだろうか。「睡眠」は、生存上必要なものであるが、どのようにすれば安眠が確保可能であるかについては、まだまだ不明な点も多い。一般的な安眠の阻害要因として、就寝間際の飲食やアルコール摂取等があると言われているが、それらも控えた場合でも、眠気が生じることがあることは誰しも経験のあることだろう。


最近、この「睡眠」の質を高める(安眠と快適な目覚め(以下:安眠等))商品を多くみるようになってきた。材質や形状を工夫した枕やベッド等の寝具はもとより、最適な起床のタイミングを案内する時計やスマートフォンのアプリケーション、眠りの効率を測定する機器等も家庭用のものが販売されるなど、安眠等へのニーズが高まっている。


この安眠等へのニーズの高まりの理由として、安眠等を妨げる要因の増加があり、結果として慢性的な睡眠不足の人が増加しているためではないかと考える。安眠等を妨げる要因の例として、様々なストレスやパソコン等(携帯電話・スマートフォン含む)からの光の刺激があるといわれている。パソコン等の画面を、就寝の直前まで凝視した場合には、寝床についても一定の時間は熟睡ができず、結果として「眠り」の質は低下するともいわれているためだ。テレビ等のチャンネルの増加に加え、AV機器の録画機能も益々充実してきている。SNSや動画サイトも増加しており、ユーザーが注意をしなければ、安眠等への影響は大きくなる。


さて企業では、安眠等の確保について、どう考えるべきだろうか。従業員の睡眠不足は、単純な居眠りというロスにとどまらず、不注意による事故を引き起こす原因となり、企業のリスクに直結する。また業務上のストレスが要因である場合、事業主としてのメンタルヘルス対策に関する不備が疑われる場合も想定される。それらに加え、ストレスによるホルモン分泌は、肥満にも作用するとされ、さらに肥満は睡眠時無呼吸症候群や糖尿病の原因ともなる。従業員の安眠等の状態を把握することは、当該疾病から生じる事故の防止ともなる。健康保険組合加入の企業であれば、肥満から症状が進行し、その結果糖尿病となれば、その後の合併症等により医療費が増加する懸念も生じる。


現在、健康保険組合等では、メタボリックシンドローム対象者に生活習慣病対策として、食事制限・運動指導等の保健指導等を行っている。しかし睡眠に関しては、状況の確認だけにとどまり、指導を行っている例は少ない。「睡眠」は短時間で済む人、長時間必要な人等の個人差があるといわれており、自己の睡眠パターンの理解と生活パターンの見直しの他、就寝前の時間の過ごし方に注意喚起することで、安眠等の確保が期待できる。


今後企業は生活習慣病の対策と並行して、安眠等の状況確認を行い、必要な睡眠指導(安眠等の確保の方法等)を全従業員に行うことが、生産性の向上、企業のリスク管理、医療費削減、労働安全衛生の面からみても求められるようになってくるのではないだろうか。

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