タブレット端末はパソコンを追い抜けるか?
2011年06月22日
米国でタブレット端末の人気が上昇している。様々な機種が販売され、利用者数が増え続けている。ニューヨークでは、喫茶店や電車などの公共の場でタブレット端末を使用する人を見かける機会が増えてきた。近年中にはタブレット端末がネットブックを市場から追い出す可能性すら指摘されている。では、この先果たしてタブレット端末が市場から(ネットブック以外の)パソコン(※1)も追い出す可能性はあるのだろうか?
タブレット端末の利点は、大画面ながらも薄くて軽い本体や持続時間の長いバッテリー、簡単に操作ができるタッチパネルである。パソコンと比較してもほとんど問題無く使用することができる。タブレット端末は携帯性を重視している為外出先などでの使用や、軽量である為ソファなどでテレビを見ながらの使用が増えているようである。
個人利用では、タブレット端末がパソコンに代わる可能性を示す調査結果が2011年5月に米調査会社のNielsen社から発表された。それによれば、現在米国でタブレット端末を保有する人の約30%超がパソコンを以前より使用しなくなった又は全く使用していないという。また、同保有者の約77%はこれまでパソコンで行っていたことと同じことをタブレット端末でも行っているという。
ではビジネスでの利用はどうだろうか?先日筆者が米国内を出張した際、タブレット端末とノートパソコンの両方を携行した。ところが大部分のこと(Eメールやインターネット閲覧、文字入力中心の資料作成など)はタブレット端末で十分できる為、ノートパソコンを使用する機会は少なかった。また、タブレット端末はバッテリーの持続時間が長い為、電源を確保するといった心配が少なくむしろ快適さを感じることが多かった。作業量や質の程度にもよるだろうが、出張時はノートパソコンの必要性が低くなっていることを実感したのである。(当コラムもタブレット端末を使い、外出先などで素案を作り執筆している。)
しかしながらタブレット端末にも欠点はある。それは、データ保存容量が今のところ少ない、パソコンのキーボードと比較して誤字入力が多い、指での操作により対象物の選択を間違え易いなどである。そして資料作成にはパソコンよりも時間がかかってしまう場合が多い。ビジネスを含む日常生活全般でタブレット端末がパソコンに代わることはまだ完全には難しい。
新しいサービスの登場でこの状況は大きく変わるかもしれない。最近、タブレット端末からの使用も考えられた個人向けクラウドコンピューティング(クラウド)が注目されている。これを活用することで文章ファイルや画像・動画などのデータをクラウドに配置・管理でき、タブレット端末のデータ容量の少なさを補うことができる。一方で、タブレット端末で使用できるキーボードやマウスなどのアイテムが発売されており、必要に応じて操作性の問題も解決可能である。利便性が高まりそれが認識されることで、パソコンからタブレット端末へ乗り換える人が増加することは十分に考えられる。今後もタブレット端末市場の動向から目が離せない。
(※1)ここではデスクトップパソコンとノートブックパソコンを指す。
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