オバマ政権2期目の課題
2011年05月02日
アメリカにとって、2000年代はどんな時代だったのだろうか。
政治的には、ブッシュ政権による共和党の時代が2期8年(2001年~2009年)続いた。軍事的には、9.11事件とアフガニスタン、イラクへの軍事介入。経済的には、ITバブル、住宅ブームによる経済の活況とその後の2度のバブルの崩壊。株価は、10年間でいってこいの展開となった(S&P500 2000年末1320→2010年末1257)。
社会的には、先進国の中では珍しく10年間で人口が3000万人近く増加したものの、雇用者は200万人しか増えず、失業率は4%から9%に倍増し、貧富の格差も拡大した。アメリカの家計の年間平均所得は、1999年にピークをつけた後、10年後には5%減少した(1999年5万2388ドル→2009年4万9777ドル)。
アメリカの貧困率は、最近20年間でみると、ブッシュ(父)政権時代(1989年~1993年)の1993年に15.1%にまで上昇したが、その後のクリントン政権(1993年~2001年)の8年間で下がり、2000年に11.3%とボトムをつけた。しかし、その後、リーマン・ショックによる経済危機もあり、ブッシュ(子)政権下、2009年には14.3%に上昇、7人に1人が貧困層となっている。貧困人口は、2000年3158万人から2009年4356万人に1198万人増加し、過去最多となった。
政権担当時の景況の差はあるが、概ね共和党政権下で貧富の差が拡大し、民主党政権下でその差が縮まっている。特に、ブッシュ(子)政権時代には、富裕層への減税などにより貧富の格差が拡大した。
アメリカ社会が二極分化しつつある中で登場したオバマ大統領は、アメリカ社会の変革を掲げ、貧困層やマイノリティーの生活向上、アメリカ社会の一体化を目指した。だが、オバマ政権は、医療制度改革や金融制度改革など大改革の実績を作ったものの、昨年11月の中間選挙の敗北により富裕層への減税の継続をせざるをえなくなり、前政権の負の遺産である高い失業率とあわせ、1期目は不本意な結果になったと思われる。
来年の大統領選挙まではオバマ政権は大きな動きはとれないだろうが、2期目には貧富の格差解消に全力を投入してくるのではないだろうか。
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