問われる復興の構想力
2011年03月31日
東日本大震災の被災者の救済と被災地域の復興は、あらゆる人知と惜しみない努力によって必ず成されていくだろう。ただ、現時点では電力の供給制約、原発問題による不確実性があまりにも大きく、短期的には相当な景気悪化が不可避の情勢となっている。復興需要の本格的な発現も、電力の供給制約が解消されるまでは期待しがたい。
最終的には巨額に上る復興資金の一部を公債発行で賄うことも必要と思われるが、公債増発が財政破綻のリスクを高めかねないという懸念もある。確かに野放図な公債発行は避けなければならないが、復興資金を惜しんで日本経済の成長軌道が長期にわたり下方に屈折するような事態となれば、財政破綻のリスクはむしろ高まってしまうだろう。だから今問われているのは、復興という名の成長戦略そのものである。
1923年9月1日に発生した関東大震災は、死者6万人近くに上る大災害であった。都市改造に情熱を傾けていた後藤新平が、震災後まもなく復興計画をまとめ上げ、9月27日には帝都復興院を設置。その後、内外債を発行するとした財源に対する反対、都市計画に対する無理解、さらに権力争いも絡んで、結局、復興予算は、当初、後藤新平が意図した数分の一程度に縮小されてしまった。それでもこの復興事業によって東京の都市インフラは飛躍的に整備されることになった。惜しむらくは予算が縮小された結果、都市整備が不完全に終わったことであり、もしそうでなければ太平洋戦争時の東京大空襲による火災被害はもっと少なかったはずという見方もある。
今回の大震災が残した被害の様相は、当時とは大きく異なるけれども、復興における構想力、リーダーシップ、実行スピードの重要性は、何ら変わることはない。
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