メアリー・シャピロSEC委員長の3月11日、5月8日の講演
2009年06月02日
メアリー・シャピロSEC委員長は、就任直後は特に活発には講演活動を行なわずに来たが、4月頃から、講演会の頻度も高まってきた。その中でも最も注目されると思われる、3月11日に、米国下院で行なった、「金融サービスと政府一般」と題する講演の概要、および5月8日に米国投資会社協会で実施した、「安定的で効率的な金融システムの構築」と題する講演の概要を紹介しよう。はじめにこれらの講演が特に注目されると思われるのは、次の三つの理由による。
(1)SECが過去数年のトレンドを転じて組織拡大に向けて方向を転じたことが明らかになった。(3月11日の講演から)
(2)決定的な形での意思表明とまでは言えないが、「資本市場の規制者」としてCFTC統合に前向きの意向を発表した。(5月8日の講演から)
(3)米国の今後の金融制度について、CFTCなどを加えた四極的なツイン・ピークス制度を目指す意向を明らかにした。(5月8日の講演から)
はじめに3月11日の講演では、「御存知の通り、前政権の2009年度に関する、SECに関する予算請求は、昨年比1%未満の増加にとどまっていた。しかしSECは5%の増加を要求するつもりである。しかし、これは現有スタッフのレベルを維持し、彼らの生計費等を供給できるだけである。前政権の要求どおりでは、100人近い人員削減もやむを得ないところであった。」とメアリー・シャピロ委員長は述べている。
前政権、すなわち、ブッシュ前大統領の意向の下で、クリストファー・コックス前SEC委員長は、金融技術も発達した21世紀になった以上は、従来のように規制に費用をかける必要は無く、予算は削減できると本来考えていたらしいのである。その考え方が、「米国発の金融危機」となって帰結したものと考えられる。メアリー・シャピロ委員長は、「急速に拡大する市場の下では、SEC人員数の最近の低下は、効率的に市場動向に対応して監督を行う、SECの能力を著しく低下させたと考えている。」と述べている。
次にSECとCFTCの統合問題に関しては、メアリー・シャピロ委員長は、「加えて資本市場の規制者は、統合される必要がある。(中略)資本市場の規制は一つで全体をなすものである。細かい部分に切り分けてしまったら、収集がつかない滅茶苦茶なことになってしまうと私は強く信じている。」と述べている。
最後に四極的なツイン・ピークス制度を支持する事に関しては、次のように明言している。
「次の原則を調整して取りまとめた姿の金融規制を作ることができるだろう。そのシステムには次のような部分が含まれる。
・投資資本を取引する市場の規制に責任のある規制監督機関(3月11日の講演から)
・銀行の規制に責任のある規制監督機関
・金融システム全体に対するリスクをモニターし、防止に努める規制監督機関
・問題の生じた金融機関の処理・調整に責任のある規制監督機関。」
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